夢幻

□蝉時雨
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窓を叩く水の音

朝方の静かな空気には不似合いの、不機嫌な音
目だけを動かせば窓の向こうに広がる灰色の空

今日は雨

誰かと一緒に出かけるわけでもない

誰かを待っておめかしする必要もない

フッともう一度目を閉じる

雨音がどこか心地良い
夢の中へもう一度飛び込めば
願った相手が現れてくれるだろうか

もうすぐ夜明けの時間
部屋の中にこもる雨の匂い
全てをもう一度抱き締めて

今日だけの夢を見た

窓の向こうは
寂しげな、蝉の鳴き声だけ
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