開けてはいけない扉もあるよ?
□盲目の秋
1ページ/4ページ
それといふのも私が素直でなかつたからでもあるが、
それといふのも私に意気地がなかつたからでもあるが、
私がおまへを愛することがごく自然だつたので、
おまへも私を愛してゐたのだが・・・・・・
「盲目の秋/中原中也」
今度安岡が結婚するらしい。
メンバーを集めて、みんなに報告をしていた。
とても幸せそうに。
メンバーはもちろん祝福した。
俺だって祝福した。
でも、少しだけ仄暗い気持ちで、祝福を送ったんだ。
だって、そうだろ。
お前の幸せを一番に願っていたのは、きっと俺だから。
そしてできるなら、その隣にいるのは俺であればと願ったりもした。
その報告が終わった後はいつも通り仕事に興じた。
変わらぬスタンスで、いつも通り。
ふざけ合ったりもした。
唯一違うのは、その左手の薬指だけ。
その指事さらっていこうかと思ったくらいだ。
「ねぇ、ユージさん。」
「ん?なんだ?」
「今日帰り暇?少し付き合ってほしいんだけど。」
「あ?別に何もないが、良いのか?」
「??」
「新婚さんが早く家に帰らなくて、だよ。奥さん待ってるんじゃないのか?」
「あ、今日はネ。ちょっと用事があるからって言っておいたから。向こうも友達とご飯食べに行くんだって。」
「そうか。それなら遠慮なく、花婿さんをさらっていきますかね。」
「なに?それ?」
少しバカにしたような笑みを浮かべながら、安岡は俯いた。
何だか悲しそうだな?
そんな顔見せて見ろよ。
俺がかっさらっていく理由がどんどん増えるだけじゃないか。
「じゃあ、後でね。」
「おう、後でな。」