開けてはいけない扉もあるよ?

□盲目の秋
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それといふのも私が素直でなかつたからでもあるが、
それといふのも私に意気地がなかつたからでもあるが、
私がおまへを愛することがごく自然だつたので、
おまへも私を愛してゐたのだが・・・・・・

「盲目の秋/中原中也」


今度安岡が結婚するらしい。
メンバーを集めて、みんなに報告をしていた。
とても幸せそうに。

メンバーはもちろん祝福した。
俺だって祝福した。
でも、少しだけ仄暗い気持ちで、祝福を送ったんだ。

だって、そうだろ。
お前の幸せを一番に願っていたのは、きっと俺だから。
そしてできるなら、その隣にいるのは俺であればと願ったりもした。

その報告が終わった後はいつも通り仕事に興じた。
変わらぬスタンスで、いつも通り。
ふざけ合ったりもした。
唯一違うのは、その左手の薬指だけ。
その指事さらっていこうかと思ったくらいだ。

「ねぇ、ユージさん。」

「ん?なんだ?」

「今日帰り暇?少し付き合ってほしいんだけど。」

「あ?別に何もないが、良いのか?」

「??」

「新婚さんが早く家に帰らなくて、だよ。奥さん待ってるんじゃないのか?」

「あ、今日はネ。ちょっと用事があるからって言っておいたから。向こうも友達とご飯食べに行くんだって。」

「そうか。それなら遠慮なく、花婿さんをさらっていきますかね。」

「なに?それ?」

少しバカにしたような笑みを浮かべながら、安岡は俯いた。
何だか悲しそうだな?
そんな顔見せて見ろよ。
俺がかっさらっていく理由がどんどん増えるだけじゃないか。

「じゃあ、後でね。」

「おう、後でな。」
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