ストラムメッセンジャー

□スラップスティックコメディ
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スラップスティックコメディ
‐BadEnd is HappyEnd‐



ある晴れた日の昼下がり。自宅のリビングにて。
俺の目の前には墨汁と半紙。

まさか高校1年生にもなってから、小学校で使った書道セットを引っ張り出すことになろうとは思わなかった。

どう考えても実用性ゼロなのに、何故か小学校で買わされた書道セット。

外側のカバンの色は黒と赤の二種類があった。
赤はガンメタリックな赤で、何気にかっこよかった。
「キュートでラブリーな赤」というよりはどう考えても「燃えよ俺様の赤」という感じだった。

そんなわけで、俺は赤が欲しかった。

けれど「男子は黒、女子は赤でしょ」という謎の風潮があったせいで、赤を買うことができなかった。

しかし、そんな風潮に負けず、赤を買った男子がいた。
やつは勇者だ! 俺はそう思った。

そして勇者のあだ名は「オカマ」になった。


そんなかなりどうでもいい思い出しか詰まっていないこの書道セット。

「青井 一星(アオイ イッセイ)」と名前の書いてある筆。同じくヘタクソな字で「青井 一星」と書いてある文鎮と硯も用意。
大きく深呼吸して、精神を静める。
まずは一文字目、「天」!


天は、自ら、助くる者を、助く!


一気に筆を滑らせる。
芸術は爆発だ! なんかよくわかんねーけどとにかく炸裂だ!

気合いで書き上げた渾身の作品が出来上がった。

今しがた書き上げたばかりの書を見て、俺は1人で悦に入る。

『天は自ら助くる者を助く』。
すばらしい言葉だ。すごく良い感じだ。

わざわざ筆で書いてみたのは、なんとなくそのほうがボールペンやなんかで書くよりは格好がつくかなと思ったからだ。
座右の銘としてこの書を部屋に飾ろう。

やるぞ、やるぞ、俺は――


「――なぁにこれ。ミミズの這ったあと?」


振り向くと、姉がしらーっとした目で俺を見下ろしていた。


「書道セットなんか持ち出して何してんのかと思ったら、ミミズ……」

「ミミズじゃねーっ! 人が心を込めて書いたのに、それを"ミミズが這ったあと"ってなんだよてめぇ、だいたい、いつもそうやって――」

「あ、ちゃんと名前も書きなさいよ」


人の話を聞きなさいよ!


「どれ、お姉ちゃんに貸してごらん! 名前を書いてあげよう」

「やめろ! 空代(ソラヨ)だって俺のことどうのこうのいえるほど字うまくねーだろ!」

「何よー、年上の人間のいうことは素直にききなさいよ」

「一歳しか違わねぇくせに偉そうにすんじゃねーっ!」

「キャンキャンうるせーなぁもう。じゃあ自分で書いてみてよ。どれだけ素晴らしく書けるのか見ものだわ」

「ふん、少なくともお前よりゃうまく書いてやらぁ」
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