リトルバスターズ
□第三話【世界の秘密】
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一日がとても長く感じる。
永遠に続く世界では当然か。
教師「で、あるからして―――」
黒板の前に立つ教師の言葉は全く頭に入ってこない。いや、入れる必要もない。
手元の英語のノートと教科書から目を離し、今の時間を確かめる。
時間は午後一時三五分を回ったところだった。
嵩(・・・・・・もうすぐでこの五時間目も終わるなぁ)
次の授業が終われば放課後。これまでに繰り返した一学期内だとすれば、六時間目が終われば恭介のもとに謙吾を除く僕たち幼馴染勢が向かうことになっている。
嵩(さて、と・・・・・・。そろそろチャイムがな―――)
ぐらっと、世界が反転する感覚。
視界が閉ざされ、暗闇に落ちる感覚に囚われる。
おかしい。
これまでに繰り返した中では、この時間帯にこの病気がくるはずがなかったのに。
ザーザーザー、とノイズの音が頭に流れ込んでくるのと同時、目の前には倒れている大勢の学生達が見えた。
鮮明に覚えている。
これは、大型バスで修学旅行に向かう途中に起きた不慮の事故の記憶だ。
車内から見る限りでは、横転したバスのフロントガラスから派手に壊れていて、車内には僕のクラスメイト達が意識を失った状態で至る所に倒れている。
その中には、当然理樹や鈴、真人に謙吾も意識を失って倒れている。
僕は理樹と鈴の上に覆いかぶさるようにして。その上から真人に庇ってもらっていて、さらには謙吾に抱かれるようにして守ってもらっていた。
僕は二人の体を静かにどかし、状況を確認するために一度外へ脱出する。と、地面には赤い血がバスの底面に続いているのに気づいた。
その跡を辿っていくと、バスの底面の中央部分に背もたれしている恭介の姿が見えた。
何度か彼の名前を呼ぶと、うっすらと目を開けて、恭介は言った。
恭介『逃げろ・・・・・・』
周囲に立ち込めるガソリンの匂い。
それだけで今起こっている事が危険な状況だと把握する。
だが、中にいるクラスメイト達は誰一人として目覚めていない。
僕は舌打ちをして痛む体を引きずるようにして車内に戻る。誰か一人でも助けたくて。
と、そこで僅かに理樹と鈴の声が聞こえてきた。
僕は慌てて二人に近づき、二人の体を抱き起こす。
二人は何が起きたか理解していない様子だったが、僕は構わずに理樹と鈴をバスの外へと運び出し、安全だと思った場所に寝かせて、またバスへと戻る。
真人と謙吾は僕よりも体が大きい。一度に二人も運ぶことは無理だ。
真人を運ぶか。健吾を運ぶか。クラスメイトを運ぶか。
悩んでいる時間はないのに、体は素直に動いてくれない。
いや、動かない。
世界が堕ちていく。
視界が暗くなり、倒れている真人か謙吾の体の上に倒れこむのが分かった。
こんなときに、厄介な病気が発症してしまった。
バスの外から理樹と鈴の声が聞こえる。
逃げろ、と口に出したくても口は動かない。
そして―――僕達が中にいたまま、バスは爆発を起こしてしまった。
・リトルバスターズ