リトルバスターズ

□第五話【第一の試練】
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翌朝、五月一六日。

いつもと同じように謙吾に起こされ、いつもと同様に食堂に向かい、これまたいつもと同じ席で僕は朝食を摂り始めた。

食べていると、数分もしない内に幼馴染達が勢揃いした。

しかし何だろう。

今日の朝はいつもより穏やかな感じがする。

それはなぜかというと、

恭介「・・・・・・」

鈴「・・・・・・」

恭介は新聞を読みながらご飯を食べていて、鈴はというと『レオン』にミルクを与えてからはジーッと食い入るように『レオン』の様子を見ている。

謙吾と僕に至っては、食事中はあまり話をしないので誰かが話し掛けてきたりしないと黙々とご飯を食べ進める。

四人がこうして黙っていると調子が狂うのか、真人は頭を掻きながら恭介に話かけた。

真人「なんか目を引く事件でもあったか?」

その声に、恭介は新聞から顔を上げて、

恭介「ああ・・・・・・嫌な事件が世の中起こるもんだぜ」

嵩「嫌な事件ねぇ・・・・・」

恭介「鈴、たまには新聞でも読んでみないか?」

鈴「・・・・・・」

だが鈴はうんともすんとも言わずに、猫だけを眺めている。

理樹「猫の食事に集中しすぎていて、聞いてないね・・・・・・」

謙吾「漫画ばっか読んでるお前が言える台詞か」

恭介「まぁ、そういう俺も四コマ漫画目当てなんだが」

嵩「だと思った・・・・・・」

恭介「お、面白いじゃないか。当たりだぜ」

嵩「ふーん・・・・・」

真人「どうした嵩。今日はなんか元気がないみたいだが」

嵩「んー・・・・・ちょっとね」

昨晩、校舎で起きた事が脳裏を過ぎる。

『朱鷺戸沙耶』。

恭介が愛読している『学園革命スクレボ』の女の子の主人公は、恭介が望んだことにより、この世界に生まれた少女だ。

そんな彼女と夜遅くに校舎で出会い、僕の生死を賭けたバトルを行ったのだが・・・・・

嵩(・・・・・昨日はあのまま逃げちゃって謝れなかったし・・・・・・。それに生徒手帳も返してあげないとなぁ)

とあるハプニングにより、バトルから逃げ出した僕がまた彼女と戦った廊下に戻った所、朱鷺戸さんはいなく、代わりに彼女の生徒手帳が落ちていたのだ。

顔を合わせずらいが、ちゃんと返して謝らなければいけないので今日のホームルーム前にでも朱鷺戸さんのクラスに行くつもりだ。

謙吾「そう言えば嵩。お前、昨日校舎から帰ってきてからやけに挙動不審だったが・・・・・」

理樹「何かあったの?」

嵩「い、いや、何もなかったよ、うん」

後で恭介にでも相談しよう。

理樹達に無駄な心配などかけたくないし、朱鷺戸さんの事に関しては、僕と恭介の間だけの秘密なのだから。

と、ふいに目の前に座り猫を眺めていた鈴がおもむろに携帯電話を取り出した事に気づく。

誰かにメールでも送るのか、ちまちまと携帯を操作している。

嵩「ん?」

それを見たのか、今度は隣に座る理樹も携帯電話を取り出した。

そして操作をし始めるのを見ていると、僕のポケットの中の携帯電話が震えた。

取り出して開いてみる。

メールが着ていて、宛先は鈴からだった。

内容はずばり、『手伝ってくれ』との事。

嵩「へ?」

思わず鈴を見る、と。

また手元の携帯電話が震えた。

携帯電話に視線を戻すと、やっぱりメールが着ていた。

しかも今度は理樹から。

隣にいるんだから口で言ってもらえばいいものの・・・・・と思いながら、メールを確かめてみる。

『今日の休み時間に手伝ってほしい事があるんだけど、良いかな?』

だから何を。

主語が抜けてますよ二人とも。

二人して何を手伝ってほしいのかが分からない。

嵩(・・・・・・って、確か今日は・・・・これまでと同じ世界なら理樹と鈴が『校門のイモムシ問題』をどうにかする日だったっけ?)

二人がこの世界で、恭介に与えられた『試練』の一つだが。

断る事も出来るけど、そうはいかない。

恭介と約束したのだ。

これまで通り、二人の試練が上手くいくように協力をしてやると。

嵩(だけどなぁ・・・・・・。今は朱鷺戸さんの事もあるし・・・・・。あぁ、なんか今日はハードな一日になりそうだな)

できればそうなってほしくはないと思いつつ、僕の顔を見ていた二人に苦笑いを浮かべてから頷いて返事をしておいた。









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