リトルバスターズ

□第7話【非日常の始まり】
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『秘宝』が眠るという地下の入り口は、校舎のどこかにあるという。

大体の見当はついているから、そこまで沙耶が案内してくれるという事で、僕たちは今寮から校舎までの道を歩いているところだった。

沙耶「本当に良いの?」

と、隣を歩く沙耶が銃を一丁手渡そうとしてくるが、僕はその銃を沙耶に押し返す。

嵩「平気平気。木刀だけでもいけるよ。っていうか、『影』が現れたら僕が前に出るよ。沙耶は後ろからその銃で援護してくれればいいから」

沙耶「ずいぶんな自信ね。白兵戦が得意なの?」

嵩「そういう訳じゃないよ。ただ単に、沙耶が怪我するところを見たくないだけ」

沙耶「・・・・・・、」

なぜか沙耶のほっぺたが赤くなった。

沙耶「べ、別に嵩君に心配されるほどあたしは弱くはないわ。これでもプロのスパイなのよ?」

嵩「・・・・・素人の僕に、銃を叩き落とされた子がいうような台詞には思えないよ」

沙耶「あ、あれは油断していたのよ!そもそも、嵩君が銃を向けられてたのにお構いなしに動いた事にびっくりしてたの」

嵩「ふーん・・・・・でもまぁ、今ここで戦っても、僕が勝てると思うけど」

沙耶「・・・・・その自信はどこから来るの?」

嵩「この満天に輝くお星様から!」

沙耶「今曇ってて、星どころか月も見えないんだけど」

嵩「じゃあ特にはない!」

沙耶「最初からそう言いなさいよ!・・・・・ハァ。なんか、嵩君といると本当に調子が狂うわね・・・・・」

嵩「あはははは。なんか沙耶と話してると面白いからつい変な事言っちゃう・・・・・・っと。来たか」

歩みを止める僕たちの前に、制服を着た影が近づいてきた。けど、手や顔は真っ黒で、表情さえ持たない不気味な存在だった。

『TK−010』

口もなく、どこから声を出しているのか不明だが、それが喋る。

『もう夜の顔で隠す必要もないということか。隣には、二年E組出席番号七番、紅蓮嵩・・・・・最も危険な人物を仲間に引き入れるとは思いもしなかった』

そこまで僕を危険視してるのか。

でもまぁ、とりあえず。

嵩「邪魔だ」

謙吾に内緒で拝借してきた木刀で斬りつける。

手応えはなく、ぱさっと制服だけが地面に落ち、それを着ていた影は霧散した。

沙耶「なんの躊躇いもなく斬りかかったわね」

嵩「まぁね。木刀でも下手をすれば人を殺しちゃうし大怪我もさせちゃうけど、相手は影で人間じゃないって分かってるから」

ひもで腰に木刀をくくりなおしながら、僕は言う。

嵩「それに、これでも一応力は抑えてるつもりだし。本気を出したらきっと、奴らが束になってかかってきたとしても勝てると思う」

これは冗談や酔狂で言っているつもりではなく、本心から言ってる。

僕にはリミッターを外す事ができるし、何より剣道部のエースである謙吾の朝練に毎日伊達に付き合ってはいないから。

もし奴らが僕みたいな人間業を超える芸当を使ってくるのだとしたら、考えものだけどね。

沙耶も僕が冗談で言ってる雰囲気じゃないと察したのか、真剣な顔で、

沙耶「嵩君の力がどれほどのものかまだ分からないけど、少なくとも普通の学生にはない力を持ってるって事は分かったわ」

それでも、と彼女は続けて、

沙耶「あまり闇の執行部をなめないほうがいいわよ」

嵩「分かってる。でも、僕は自分の事より沙耶の方が心配なんだよね・・・・」

沙耶「・・・・・・なんで?」

嵩「沙耶ってしっかりしてるように見えるけど、なんか抜けてそうなところがあるから」

沙耶「・・・・・・、」

唖然とする沙耶だけど、僕にはちょっと心当たりがある。

例を述べるなら、初めて会った時にうっかり自分の正体を言ってしまった事など。

プロだと沙耶自身は言ってたけど、まだ彼女は僕と変わらない年齢だし。

沙耶の力をまだ垣間見てないからなんとも言えないけど、少し不安になりながらも僕たちは止めていた足を進め始めた。











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