リトルバスターズ

□第二話【リトルバスターズ】
2ページ/8ページ





しばらく戸惑っていた野次馬たちだったが、一人が何かを投げ入れてくると、それを合図にしたかのように活気づく。

お祭り騒ぎのように一斉にいろんなものを僕たちに向けて投げ始めた。

謙吾「・・・・・・・」

謙吾が目を伏せる。その前には怒涛のように、野次馬たちが投げ入れる何か。心の目で読むようにその中に手を差し出した。

すちゃ、と握りしめる。

武器が選ばれたことに、おおーっ!とどよめきをあげる野次馬一同。

「なんだあれは?拳銃か!?」

謙吾が天井に向けて、引き金を引く。すると、こつんと音がして、みんなの前に小さな銀玉が転がった。

謙吾「これで殴っていいのか?」

嵩「だめだよ!それだと危ないことに変わりないよ!?」

恭介「だめ。本来の使用方法で戦うこと」

謙吾「・・・・・・」

謙吾の武器が確定したところで、皆の視線が今度は真人に向く。

真人はその手に妙なものをぶらさげたまま、固まっていた。

嵩「ま、真人・・・・・・?」

謙吾「真人よ・・・・・。お前はどうして猫なんて持ってるんだ?」

そう。

真人の手には、招き猫でも彫像の猫でもなく、本物の猫がぶら下がっていたのだ。しかもその猫はどこかで見た事のある猫なのが、なおさら違和感がある。

真人「・・・・・・武器だよ」

謙吾「え?なに?」

真人「オレの武器だよっ、わりぃーーーか!!」

嵩「真人、生き物は大切に扱おうね?」

真人「わかってるよ!つーかどうやって戦えばいいんだよっ!」

恭介「猫で戦うこと」

真人「なんでだよ!?」

嵩「というかその猫って、どっかで見た事あるんだけど」

恭介「さぁ嵩。次はお前が選ぶ番だ」

嵩「・・・・・・・」

そうだった、と僕は両手で頭を抱えた後、僕は何気なく足元に落ちていた『ソレ』に手を伸ばした。

期待に瞳を輝かせる野次馬たち、この際はっきり言おう。

嵩「誰!僕の使ってたスプーンを投げ入れたの!?」

いつの間にかトレイの上から僕の足元に落ちていたスプーンを手に、僕は怒鳴った。

床に落ちた以上、洗わないといけないし拾ってしまったのだから『コレ』を武器にしなくてはいけないのだ。

カーン!と誰かがわざわざ持ってきたのか、コングの音と恭介の『ファイト!』という声。

本当にスプーン一つで真人と謙吾と戦わなくてはいけないようだ。

謙吾「いくぞっ!」

謙吾の攻撃!

謙吾は銀玉鉄砲で嵩を撃った!

嵩「・・・・・・・痛くないんだけど」

四弾命中したが、嵩には0ダメージ!

真人「いくぞ嵩!」

続いて真人の攻撃!

にゃー!

猫は嵩にお手をした。

嵩に0のダメージ。

嵩「あははは、可愛い♪」

真人「うおおっ!なんでだー!?」

逆に真人に108のダメージを与えた!

謙吾「こうなったら目だな、目を狙ってやる」

嵩「ひどい!目はやめてよ!」

謙吾の攻撃!

謙吾は銀玉鉄砲で嵩を撃った!

嵩「イタタタタ!!謙吾!後でその竹刀へし折ってやる!」

謙吾「何!?そ、それはやめてくれ!」

嵩に四弾命中し、4のダメージを与えたが、仕返しとばかりに嵩の言葉攻めで89のダメージを負った!

嵩「もういい加減にしてよ二人とも!」

嵩の攻撃!

嵩はスプーンで真人の胴体を狙った。

クリティカルヒット!

真人に191のダメージ!

真人は倒れた。

真人「ぐああ!?」

嵩「ふん・・・・・・。どんなに筋肉を鍛えても人間の急所は鍛えれないんだよ、真人」

どさりと床に倒れた真人の手から、猫がするりと抜け出してちょこんと紅蓮の頭の上に乗る。

おおーっ!と野次馬の歓声を聞きながら、紅蓮は謙吾に振り返る。

嵩「次は謙吾だね」

にこりとこみかめに青筋を浮かべる嵩の腕力が100上がった!

反射神経が100上がった!

謙吾「くっ!」

謙吾の攻撃!

謙吾は銀玉鉄砲で嵩を撃った。

嵩「ふっふっふ、効かない効かない♪」

しかし謙吾の攻撃は、嵩のスプーンに全て防がれてしまった!

謙吾「しまった、玉切れか!」

嵩「隙ありっ!」

嵩の攻撃!

玉を込めようとした謙吾の胴体を狙う。

クリティカルヒット!

謙吾に201のダメージ!

謙吾は倒れた。

謙吾「む、無念・・・・・」

恭介「そこまで!勝者―――」

「こらああぁぁーーーーーーっ!!」

恭介の声と野次馬たちの歓声を引き裂くように響き渡る怒声。

こんなにも大声を出せる人といったら、僕は一人だけしか知らない。

頭の上に乗る猫も、その大声に驚いたのかビクリ!と一瞬震えていた。

「おお!我らが鈴様のご登場だ!」

周囲の野次馬が一気に沸き上がり、その女の子のために道を開けた。

鈴「弱い者いじめは、めっだ!」

野次馬たちが開いた道から歩いてきたのは、恭介の妹で名前は、棗鈴。彼女も幼馴染の一人だ。

むくりと起き上がった真人と謙吾は、鈴の言葉に首を傾げながら、

謙吾「弱い者?誰がだ」

真人「え?お前じゃね?」

謙吾「笑わせるな、嵩に先に倒されたお前より格下に見られるだと?」

真人「ふん・・・・お前だって瞬殺だったじゃねーか」

嵩「というか、二人ともなんで僕なんかにやられたのかが不思議なんだけど」

理樹「し、嵩が強すぎるんだよ」

え、そうなの?と僕は恭介の隣から見守っていた理樹に振り返る。

筋肉ムキムキな真人と、剣道部のエースである謙吾と、幼い頃に聖人とは思えない育ての親のシスターの教育という名のいじめであり戦いの日々にあってきた僕にとっては、二人の方が圧倒的に強いと思うのだが。

と、にゃーにゃーと鳴く猫がずるりと頭の上から落ちそうになり、慌てて両手で頭の上に戻す。

鈴「嵩、その猫は何だ?」

真人「オレの武器」

ずがんっ!と鈴のハイキックを受け、真人の首が真横にひん曲がった。

鈴「それ、どうしたんだ?」

嵩「誰かが投げてきたんだけど」

「ああ、それ。恭介のやつが投げ入れてた」

男子生徒が、そう目撃談を証言した。

その恭介はというと、知らぬ顔をして仰向けになっていびきをかいている。

鈴「じゃ、あたしのだ」

真人「ああ、オレの武器っ!」

僕の頭の上から鈴が猫をどかすと、真人が何やら叫びだした。

真人「誰か、新しいネコをくれ!一際凶暴なのをだ!」

鈴「猫を使うな!」

ばきぃ!と鈴の蹴りで首がさらにねじ曲がり、異様な方向に頷く真人、哀れ。










次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ