リトルバスターズ
□第六話【最強の女生徒】
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恭介は先に野球部の部室に向かって行き、考え事をしながら僕は今一人で廊下を歩いていた。
朱鷺戸さんの事。『闇の執行部』の事。恭介のあの表情と言葉の意味。そして、理樹と鈴の事。
今回のこの世界は、イレギュラーが多すぎる。
なにか不吉な事が起こる前触れじゃなかったらいいんだけど・・・・・。
嵩「・・・・・・ん?」
僕は立ち止まる。
何か、胸騒ぎを覚えて。
なんだろう・・・・・不自然に静かだ。
いや、その前に待て。
嵩「"なんで僕以外に誰もいない・・・・・?」
本来ならば、昼休みの時間は廊下は騒がしいはずだ。
その時、ぶわっ・・・・・と全身の毛が逆立つような寒気がして、僕は慌てて背後を振り返った。
嵩(なんだ・・・・・・あれ)
廊下の端にできた太陽からの死角、つまりは影。
その影の中が、うっすらと人の形をかたどっているように見える・・・・。
気持ち悪い・・・・・・なんだ、アレは。
あまりに異質で、不気味すぎる。
『二年E組、出席番号七番、紅蓮嵩』
その影が、喋った・・・・・?
『二年E組、出席番号七番、紅蓮嵩』
もう一度繰り返した。僕がなんの反応も見せなかったためか。
嵩「誰だ、お前」
『我らは闇の執行部。お前に問いたい事がある』
嵩「問いたい事・・・・・?」
『TK-010がお前と接触した。心当たりがあるだろう。それは誰だ?』
嵩「TK-010?」
一体なんの事を言っているのか分からないが、おそらく、いや、間違いなく朱鷺戸さんの事だろう。
言わないほうが身のため、か。
『そうか・・・・』
僕が黙っていると、影はあきらめたようだ。
『なら今回の件を含むイレギュラーな事態、現象を誰にも話すな。我ら闇の執行部の存在もだ』
嵩「・・・・・・なんでだ?」
『これは警告だ』
こっちの質問には答える義理はないってか・・・。
しかも警告って・・・・・ふざけてる。
嵩「話したらどうするつもりだ?」
答えはないと思っても、訊かずにはいられない。
返答次第では、これからの僕の行動にも支障が出る恐れがある。
『お前と棗は十分脅威だ。だが、その妹はそうでもない』
嵩「なに・・・・・?」
『その捕獲に回ろう』
鈴を捕獲だって!?
嵩「ふざけ―――ッ!」
そこまで言いかけて、僕は言葉を詰まらせた。
先ほど恭介と話した事を思い出す。
『闇の執行部』には、できるだけ関わるな、言う事を聞いておけ、という事を。
くそ・・・・・ッ!
嵩「分かった・・・・・・・。誰にも言わない。だから鈴には手を出すな」
『分かれば良い』
その声と共に、影は消え去っていった。
周囲からも生徒達の雑多な話し声も聞こえてくる。
どうやら完全に立ち去ったようだ。
嵩(鈴には絶対に手出しはさせない・・・・・。絶対に、守ってみせる)
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