■文 お題■
□赤の首輪
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幼い頃に拾ってきた白い犬。
紆余曲折あったけど、今では俺のかわいい飼い犬となっている。
「アンタの犬っておかしいわよね」
「開口一番ひでぇ事言うんじゃねぇよ」
その愛犬におかしいと宣ってくれたのは俺の幼なじみであるたつき。
思わず俺、黒崎一護はムッとして常に刻まれて消えることのない眉間のシワを深めた。
しかし幼なじみには全く通用せず…
たつきはそのまま話を続けてくれた。
俺の声がやたら低かったせいか、俺達に目線が集まりはじめた。
そんな事よりも今は4時間目が終わって少ししたところだ。
学生にとって4時間目が終わったら、何だ?
………昼飯だよ!昼飯!
昼休みは待ってくれないんだぞ、チクショウ。
「人相…じゃないか、犬相?悪いし」
「どこがだよ、可愛いじゃねぇか」
凍る空気。
「目が悪いんじゃないの?アンタ」
「何でそうなんだよ」
帰ってきた俺に、玄関先で親父を蹴散らしながら飛びついてくる様なんか物凄く可愛いじゃないか。
毎度毎度居間に向かって吹っ飛んでいく親父はもう見事としか言いようがない。
それに、確かに顔付きは凶悪かもしれないが、見慣れるとと逆に可愛く見えてくるんだぞ!
だが、学校で愛犬について力説すると、今まで作り続けてきた俺のイメージがぶち壊れるかもしれないので大声で言えないのが悔しい。
コイツと二人だけだったら散々愛犬の白について語り倒してやっても良いくらいだ。
そんな俺の内心などどこ吹く風。
たつきはさらに俺の犬の悪い所を探そうとしている。
………何か思い出したような顔しやがって。
彼女の一言は確かに俺も思っていた事だった。
「やたら長生きなのに老いてるカンジ全くしないし」
確かに、それは否定できない。
拾ってきたのは5年くらい前なのに全くアイツは変わらない。
当時でももう長生きしていると言われていたのにもかかわらず、だ。
黙りこんだ俺に、たつきは勝ち誇るようにフフンと笑った。
確かに変だよ。
拾った時既に立派な成犬だったのに、今でも変わらずそのままなのだ。
何せ夜には人型に化けるんだから。
ま、夜じゃなくても化けるけどよ。