wanna be T

□wanna be T 05
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あれから
暴るより早くローに抱えあげられたカンナ。そのまま、空いていたという船室の一つに投げ込まれた。

自由に使っていいと言うこの部屋。カギは付いていない。確かに必要がない。だってこの部屋から出たって、どこにも行けるはずないのだから。

それでも部屋を出る直前のローに食ってかかり、今すぐ島に船を戻して降ろせと胸倉をつかんだ。しかし意地の悪そうに笑うだけで、扉は閉められてしまった。外へ出れば隣の部屋へ入るロー。まさかと思いクルーに聞けば、この部屋はローの隣の部屋とのことだ。

カンナは怒りにまかせ扉を乱暴に閉じ、与えられた部屋の床にしゃがみ込んでしまった。



「どうしよう…海賊なんて…」



海賊

その単語に身震いが起こる。それと同時に思い出される記憶。

人々の叫び声と火薬のにおい。手を伸ばしても救えなかった人々。

大切な場所を奪った…憎い海賊…

呼吸が乱れる。カンナは苦しそうに胸をかきむしった。

右手を光らせれば少しだけ落ち着く呼吸。いつの間にか、カンナの瞳からは涙が一筋こぼれていた。それを乱暴にぬぐい去り、壁にある大きな窓へ歩み寄った。

空に輝く月はただ冷たく、カンナを見下ろしているだけ…






 

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