wanna be T

□wanna be T 07
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甲板へ向かえば、そこには思ったより人はいなかった。

そういえばさっきベポが朝食がどうとか言っていた。今頃みんな、あの食堂で食事中なのだろうか。



好都合だ。やはりこれも…導き…



その船は思ったよりも大きかった。昨日の暗闇の中では正確な大きさは見えなかったが、朝日に照らされた甲板はかなりの広さだ。カンナは船尾まで進むと、腰ほどの高さしかない柵に両手を置いた。

見渡す限りの海、そして空。その美しい青さにまるで吸い込まれるようだ。



あぁ…もっと早くに…この海に身を委ねてしまえばよかったんだ…
そうすれば、こんな…



海風に、フードはすでに頭を覆っていない。朝日に照らされて輝く白銀の髪がその風を優しく受け止めている。



「ポセイドンよ…どうか迷いし魂を、その腕に…ふふっ…悪魔の魂は救ってくださらないかな…」
「飛び降りるのか」



両手に力を込めようとすると、背後から声。一番聞きたくない声だった。

振り返ればそこにいたのは、悪魔よりも悪魔らしい男。昨日と同じく口元だけ歪めたような笑みを顔に浮かべ、カンナの元へ近寄ってきた。



「来るな」
「自殺ってのは神の教えに反してると聞いたが?」
「あんたみたいなやつが神を信じるんじゃ、世も末ね」
「俺は神なんざ信じちゃいねーよ。信じているのは自分だけだ」
「…来るな」
「俺に命令するな」



ローはすぐ目の前で止まった。

デジャヴ

カンナは無意識のうちに身構えていた。それを見下ろすロー。沈黙が2人を包んだ。



「…口を出さないで」
「お前の言うことを聞く理由なんざない」
「…黙って逝かせて」
「なぜ死を願う」



返された質問にカンナは顔をあげた。目の前のローの顔にはもう笑みがない。どこか怒りを含んでいるような表情にカンナは体が震えた。両手を握りしめ、震える声に力を込めた。



「生きている意味なんか…もう無い。私が生きていればそれだけ…周りが苦しむ…」



自分の言葉に自分が傷ついている。でも、今涙を流すわけにはいかない。必死に耐え、カンナは最後に、絞り出すように呟いた。






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