Like a KIDding U
□Like a KIDding U 3
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酒瓶抱えたまま目を覚ませば、窓の外は気持ちがよくなるほどの晴天。ぐーっと起きあがると、やはり首に違和感。ソファーなんかで寝たせいか、と首筋に手を当ててコキコキと音を鳴らす。
「あーよく寝た」
朝帰りなんて珍しいことではないけど、まぁ口うるさい小姑もいることだし、シャワー浴びて帰りますか。
「…あ」
そういえば、とベッドへ近寄ると、少年はぐっすり眠っている。口を開けちゃって、どこか間の抜けた表情だ。なんだか、幼い頃のキッドにどこか似ているような気もする。
ジュリアはクスリと微笑んで、少し乱れた毛布を直してやった。
「…あたしをソファーで寝かせた男なんて、君が初めてよ」
額に小さく口づけを落として、ジュリアはシャワールームへと向かった。
「……ん…」
寝返りを打つユリシス。その表情は、どこまでも穏やかで。本当に、可愛らしかった。
「…ほんとによく寝る子ね」
たっぷり時間をかけてシャワーを浴びてでたはずなのに、ベッドの中の少年はまだ眠ったまま。呆れた、と思ったが一瞬不安がよぎり、ベッドに片膝を突きユリシスの口に手をかざし、毛布をはがし胸に耳を押しつける。
よかった、死んでいるわけではないようだ。
「…んぅ……………へ、え?」
「あら、おはよう、ユーリ」
目を覚ましたら、目の前に美しいお姉さんがいて、しかもそのお姉さんは髪は濡れているし服もまともに着てないし、なによりベッドで寝ている自分の上に跨って、シャツをはだけさせて、手を…
「qwさzxcvfでr!!!???」
「どうした?顔真っ赤だけど熱でも出た?」
「あああああっあああの!!」
「ん?」
真っ赤な顔でなにも言うことができないユリシス。視線がジュリアの胸元に注がれていることに気づき、笑い声をあげたのはジュリアの方だった。
「なーに?お姉さんがユーリちゃんのこと襲おうとでも思った?」
「えっ、あっ、そのっ、おれっ!」
「安心なさい。男の子襲う趣味はないわよ」
「は…ぁ…」
まだ心臓がうるさい。深呼吸して落ち着こうとしているのに、ジュリアのひんやりとした指がユリシスの頬に触れる。
「それとも…襲ってほしい?」
「けけけっけ結構です!!」
「あら、残念。でもま、それだけ元気ならもう大丈夫ね」
ヒラリとベッドから降りるジュリアの後ろ姿さえも、美しくて…かっこよくて。ユリシスは目を離せなかった。
「どっどこ行くんですか!」
ジュリアは昨日羽織っていたストールを手に、ドアノブに手を伸ばしていた。
「ん?帰る」
「で、でも!」
「明日の昼までの金は払ってあるから、痛みが完全に無くなってから帰りなさいよ」
「ジュリアさん!」
「じゃーねー。お大事に」
そうにこやかに笑って、ジュリアは部屋を出ていった。
「俺…あなたに…」
ぽつりと呟いて、ユリシスはベッドを飛び出した。