Like a KIDding U

□Like a KIDding U 3
1ページ/4ページ






酒瓶抱えたまま目を覚ませば、窓の外は気持ちがよくなるほどの晴天。ぐーっと起きあがると、やはり首に違和感。ソファーなんかで寝たせいか、と首筋に手を当ててコキコキと音を鳴らす。



「あーよく寝た」



朝帰りなんて珍しいことではないけど、まぁ口うるさい小姑もいることだし、シャワー浴びて帰りますか。



「…あ」



そういえば、とベッドへ近寄ると、少年はぐっすり眠っている。口を開けちゃって、どこか間の抜けた表情だ。なんだか、幼い頃のキッドにどこか似ているような気もする。
ジュリアはクスリと微笑んで、少し乱れた毛布を直してやった。



「…あたしをソファーで寝かせた男なんて、君が初めてよ」



額に小さく口づけを落として、ジュリアはシャワールームへと向かった。



「……ん…」



寝返りを打つユリシス。その表情は、どこまでも穏やかで。本当に、可愛らしかった。



「…ほんとによく寝る子ね」



たっぷり時間をかけてシャワーを浴びてでたはずなのに、ベッドの中の少年はまだ眠ったまま。呆れた、と思ったが一瞬不安がよぎり、ベッドに片膝を突きユリシスの口に手をかざし、毛布をはがし胸に耳を押しつける。
よかった、死んでいるわけではないようだ。



「…んぅ……………へ、え?」

「あら、おはよう、ユーリ」



目を覚ましたら、目の前に美しいお姉さんがいて、しかもそのお姉さんは髪は濡れているし服もまともに着てないし、なによりベッドで寝ている自分の上に跨って、シャツをはだけさせて、手を…



「qwさzxcvfでr!!!???」

「どうした?顔真っ赤だけど熱でも出た?」

「あああああっあああの!!」

「ん?」



真っ赤な顔でなにも言うことができないユリシス。視線がジュリアの胸元に注がれていることに気づき、笑い声をあげたのはジュリアの方だった。



「なーに?お姉さんがユーリちゃんのこと襲おうとでも思った?」

「えっ、あっ、そのっ、おれっ!」

「安心なさい。男の子襲う趣味はないわよ」

「は…ぁ…」



まだ心臓がうるさい。深呼吸して落ち着こうとしているのに、ジュリアのひんやりとした指がユリシスの頬に触れる。



「それとも…襲ってほしい?」

「けけけっけ結構です!!」

「あら、残念。でもま、それだけ元気ならもう大丈夫ね」



ヒラリとベッドから降りるジュリアの後ろ姿さえも、美しくて…かっこよくて。ユリシスは目を離せなかった。



「どっどこ行くんですか!」



ジュリアは昨日羽織っていたストールを手に、ドアノブに手を伸ばしていた。



「ん?帰る」

「で、でも!」

「明日の昼までの金は払ってあるから、痛みが完全に無くなってから帰りなさいよ」

「ジュリアさん!」

「じゃーねー。お大事に」



そうにこやかに笑って、ジュリアは部屋を出ていった。



「俺…あなたに…」



ぽつりと呟いて、ユリシスはベッドを飛び出した。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ