Blue Blue Blue

□Blue Blue Blue 08
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「まったく、さっさとしろよい」



目の前に座るシオンは、今にも泣きそうな表情でうつむいている。

普段ならその表情に手を差し伸べるのだが、今日だけは別。心を鬼にしてシオンと向き合う。



「………やぁ」
「やじゃねーだろい」
「だって…」
「だってじゃねー」



かたくなに動こうとしないシオンに、マルコも大きくため息をついた。



「さっさと食べないと、コックたちも片付けられないだろい」



フォークをテーブルに置きたそうにしているシオン。

皿の上に乗っているのは、シオンが唯一嫌いなもの。



「…ニンジン、嫌いだもん」
「ダメだ」
「うぅ………」



素直で、聞きわけがよくて
ナースや親父たちの言うこともきちんと聞くシオン

そんなシオンが唯一苦手なもの
それがこれ



ニンジン



クルーたちは、いかにも子供らしいシオンの姿に笑って甘やかそうとしているが…



「食べなきゃでかくなれね―よい」



マルコだけは別。
だからこうして、とっくに昼食の時間は終わっているのに、ニンジンを残すシオンに付き合っているのだ。



「…ならなくていいもん」
「食べないんなら、親父も悲しむだろうな」
「………」



その言葉に、ようやくフォークで1個だけ、小さなニンジンを刺すシオン。



「よし、そのまま…」
「マルコ、食べて?」



にっこりと笑ってフォークを差し出すシオン。

その笑顔に思わず頭を撫でそうになるが、グッとこらえた。



「ほら」
「っ〜〜〜〜〜!!!!!」



差し出されたフォークに手を添え、そのままシオンの口の中へと押し込む。

予想していなかったのだろう。ニンジンは素直にシオンの口の中へと入っていった。



「ほら、あと3個」
「〜〜〜!!!」



吐きだそうとするシオンの口を左手で包み、さらにニンジンをフォークにさせば、涙目のシオンは大きく首を横に振った。

その姿にため息をつくマルコ。



「ならとりあえず、それだけは飲み込めよい」
「……………」



ゴクンと、大きく喉を動かして飲み込むシオン。

よほど嫌いなのだろう。顔が歪んでいる。



「さてと、残り一気に食っちまうか」
「やぁ!!!」
「シオン!」



フォークに残りのニンジンを刺していると、シオンがイスから飛び降りた。

慌てて追いかけようとするマルコ。

いち早く扉を開けたシオンが、涙目で振り返りマルコをにらみつけた。



「マルコのバカ!!マルコなんか嫌いだもん!!」
「っ………」
「ベーっだ!!」



かわいらしい舌をベーっと出し、シオンは食堂から飛び出していった。

マルコはというと…



「……………」



固まってしまっていた。






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