落ちて堕ちて

□プロローグ
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いつも通りの日常。

今日も無事に仕事を終えた私は、20階建てのマンションの最上階で自分の家に向かっていた。
開けている方を向けば、丁度沈みかけた夕陽とそれを藍色で覆う空。
影になっているビルやタワーは、少し低く見えるところで黒く連なっている。

風も気持ちいいし、大げさに言えば私はこの景色のために働いているんじゃないかと思ってしまう事もある。
ああ、新鮮だけど、いつかこんな光景が当たり前のように思えてしまう日が来るのだろうか。


というのも、私がこのマンションに一人暮らしの為にやってきたのはつい最近のことなのだ。
お隣さんにあいさつをしてから一カ月。

片方は三人家族、もう片方は私と同い年の女性がこれまた同じく一人暮らしをしている。
彼女は人当たりもよく、縁もあってか朝の出勤なんかの時に全く同じタイミングでドアを開けたりするのだ。
二週間もしない内にすっかり仲良くなってしまった。


もちろんよろしいのは近所付き合いだけではない。室内も。
玄関を入った廊下の通りには部屋が二つあり、そこを素通りすれば奥にはリビング。
よくある間取りではあるが、私は特に人と違うものを好む方ではない。

それに何より、先ほどのようにベランダからの眺めが何とも言えず綺麗なのだ。
見渡せる爽快感に一目惚れして、私はここに落ち着いた。


このドアを開けてリビングのソファへダイブすれば、あとは夕飯に有り付くだけ。
今日は焼き魚にでもしようか。



「さあ愛しのソファーちゃん!」
なんて、周りに誰もいないのを言い訳に大声を上げながら、ガチャリとドアノブに手をかけた。

が、その瞬間。




「…………は?」

ドアノブを握って足は歩きかけたまま、間の抜けた声が出た。
いつものようにドアを開ければ、視界の下の方に違和感を感じる。

玄関に何か緑色の、布みたいな……




「っうわああああ!?」



何とも情けない声だろうかと自分でも思う。
でも、いつも通り仕事を済ませて夕飯を楽しみにしながら家に帰ってきたら玄関に人が倒れていたなんてそんなシチュエーション、何億分の確率でありえることだろうか。
もしそんなことがあろうものなら、みんな私みたいに素っ頓狂な声を出すに決まってる、絶対。

だんご虫のようにうずくまって倒れている人。
見た感じは男性のようだ。
靴を履いたままその場にしゃがんで恐る恐る覗き込んでみると、そこには安らかな寝顔があった。
体にはその表情には似合わない、大小数えきれないほどの怪我があったのだが。

それにしても、どうしてこんな所に?
一体いつから?
数えきれない疑問が頭に浮かんだけど、嫌になるくらい何故か私は落ち着いていた。
無駄に腰が座っているのは感じていたが、始めは驚いたもののこんな状況で自分から倒れている人に近付く若い女子もそうそういないだろう。
もう少し可愛らしい子になりたかったと今更だが思う。

でも、何にしたってただこうして眺めているだけでは何も事は進まない。
本来ならこんなに落ち着いていられるような状況ではないのだ。
この人だって悪く言ってしまえば不法侵入者で、目が覚めたら何をしでかすか分からない。
体中傷だらけだし、もしかしたら暴力とかそういうものに慣れていないとも言えないし。


「……とりあえず、落ち着こう」

って、落ち着いてるか。
次に何をしたらいいのか分からないまま、一つ溜め息をつく。

不法侵入者にやってやることはないと言ってしまえばそれまでだが……この人、手当をしないと後々酷い事になるのは確かだ。
傷が化膿したり、菌を体内に誘いこんだり。
医学に詳しくない素人な私でもそれくらいは分かる。
……仕方ない。

「まあ……やってやるか」








半強制的人助け














〜・〜・〜・〜・〜

1話うp。
名前変換なくてごめんなさい。
それ以前に文才がごめんなさい。
まだまだ未熟ですがこれから頑張っていきたいと思いますので、良かったらお付き合い下さいませ^^

平木

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