落ちて堕ちて

□1話
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現在地、我が家(まだ土足)。

現状、目の前に人が倒れてる。




誰だこの人。








正直信じられないけど、

ここで突っ立ってても何も進展はしないのだ。













「…よし、やってみよう」



ふん、と一人鼻を鳴らして玄関へ足を進める。
もちろん、足元で倒れてる人を踏んづけたり蹴っ飛ばしたりしないよう気をつけて。

ああ、自分の家で靴も脱がないで慌ててたんだ、私。

とりあえず外に出てた時のこの格好は動きづらいし、何より暑い。
先程の衝撃もあって汗も少しかいてるし着替えたいところだけど、そんな暇もないだろう。
仕方ないので上着だけ脱いで自分の部屋にぽいと投げ込むと私は急いで玄関に戻った。




何から手をつければいいのか分からないけど、その人の傍に寄ってみた。
うつ伏せで倒れている体をごろんと半回転させて上を向かせる。

うーん、このどこか幼い顔は男の人っていうより男の子、かな。
でもそれにしてはしっかりした体つきをしているようだ。
服の上から見ただけでも分かる。



「大丈夫ですかー?おーい」
頬をぺちぺち叩いて声をかけてみる。
うんともすんとも言わずに睡眠中のようだ。
この怪我には似合わないあどけなさを含んだ表情だけど。


いや……むしろこんなに傷だらけなんだから眠くて寝てる訳でもないんだろう。
それにでこぴんしてもくすぐっても(何してるんだ私は)目を覚まさないのも無理はない。
なんせ私があれだけ叫んだ時もすやすやと寝ていたのだから。


うーむ、仕方ない。
これだけの怪我を無視する訳にもいかないし、応急手当てでもしないよりはましだと思って私は彼をリビングに連れて行ってソファに寝かせた。








…ほとんど引きずるような形になってしまったけど。














棚の上から半分程しか中身がない救急箱を持って戻る。


肌を出さない事には治療も何もない。
息を一つ吐いて私は彼の上着を脱がした。



うーん、何か…………悪い事してるみたいだ。
どうか、どうかこの間は目を覚ましませんように。



ついでに髪にも血がこびり付いてるので、布を解いて髪を下ろす。
少しウェーブのかかった栗色がソファに広がった。






なんやかんやしている内に、私の心臓は大分
落ち着いてきた。
ついでに髪や体についた血をぎこちなく拭いながらいろいろと考察をしてみる。


まず気になるのはこの格好だ。

深緑の……何だろう、多分忍者が着てるような装束だ。
体には血がたくさんこびりついていて、もちろん怪我だって全身にある。
あとはこの人を運ぶ時にカランという金属音がして気付いたのだが、苦無っていうのかな、それが彼の手から落ちた。


布で髪の毛を縛っていたしどう見たってこの時代じゃ見かけない。

この時代で見かけないのなら、この人は違う時代から来たって事になる。









うーん……考えられない………。




…とは思ったんだけど、おふざけでできるよううなレベルの格好でもないだろう。
本当に忍者だったら仕事で危険を犯したとか、敵に攻撃されたとか考えられる。


考えられないけど……これが俗にいうタイムスリップとかいうやつだろうか。
だとしたら、この人が本来生きていたのは室町時代あたりになるかな。






一通りの血は拭った。
みんな乾いてたし血が出てこないあたり傷をこさえてから時間が経ってるんだろう。






まったく、傷だらけでなんで人の家に、よりにもよってうちに来るんだ。
こんな変態見たいなことしてるこっちの身にもなってみなさいよ。
玄関開けてあなたを目にした瞬間、私の心臓は絶対止まった。



なんて、この人に八つ当たりしたって意味はないんだろう。
好きでこんなところに来たわけじゃないんだろうし。


でもこの人が目を覚ましたらどうしてここにいるのか…多分分からないって答えるだろうけど、聞くだけ聞いてみよう。









……と、落ち着かせては見たものの、まだどこか冷静にはなれなくて





ぺちん







意外と整った顔立ちをしている彼の頬を叩いてみた。





「はあああ………何やってるんだ」







ああ、ぐだぐだしててても仕方ない!


私は彼の手当を続けようと手を動かした










その時。








「…う………ん……」









この声は私のものじゃない。




と、すれば。









「……あっちゃー」





やっちゃった。




こんな格好させてる時に何が彼の目を覚ましたかって、



今のビンタだ、絶対。










「ん…………?
え……」






まだぼんやりとはしているけど、目を覚ましてしまった。

ああ、こっちと自分の格好を交互に見ている。




自分の置かれた状況に気がついたんだろう、急にうろたえだした。
いや、実は全然違うんだけどね君が考えてるのとは。





「な…………これ……

 きゃあああああああああ!!」





「女の子か君は」






怖くないのは分かった。
ただこの状況をどうにかしないといけないらしい。










世界に一つだけの出会い





「変態!?」


「ああやっぱり」







〜・〜・〜・〜・〜・


やっぱり名前変換がない……
次、次こそは!!



平木

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