散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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空気を振動させる咆哮に思わず泣くことすら忘れてしまった。
強大で禍々しい存在を感じた。
重くて、冷たくて鋭い。
それに痛い。
先程の咆哮の原因がその禍々しい存在だと気付くのに時間はかからなかった。
そして思い返せばすぐ近くで同じ気配を感じたことがある。
感じたことがある?いつ?
ナルトとして生まれる前。
どうして?
分からない。
でもなんとなく落ち着く。
しかし視覚を奪われてる今、知らない事に対する恐怖に包まれた。
禍々しい咆哮に聴覚を浸食されてしまい、他の音が聞こえない。
自分の思考する声さえも。
分かったのは自分が外に居ると言うこと。
頬に触れる外気の温度から冬に近いと予想する。
自分の誕生日が冬に近いとはとてもじゃないが想像出来なかった。
視覚が使えないため、その恐怖は半端じゃない。
闇は、怖いよ...。
刹那、布越しに感じた体温。
安心出来て、優しく、とてもあたたかい。
それにどこか切ない。
やっと声で分かったのは彼が父親だと言うこと。
温もりはすぐに離れてしまい、背に地面の固い感触。
すぐ近くで父親と母親が言い争っているのが分かる。
険悪なそれではなく、互いに思いやるような言葉。
会話を聞いていれば父親の名前がわかった。
ミナトと言うらしい。
なかなか素敵じゃないか。
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