不浄の華は絶闇で毒を孕む
□不浄の華は絶闇で毒を孕む
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ついに帝国との練習試合の日が来た。
俺は口角が上がるのを無理に引き締め、いつものオレらしい笑みを浮かべた。
本当の俺を知った豪炎寺はきっと普段のオレが不思議に思えてならないだろうな。
なんて思いながら相手チームのキャプテンを見た。
鬼道有人。
天才ゲームメーカー。
赤いマント、青いゴーグル、高めの位置で結われたドレッド。
どれをとっても異質だ。
いや、変だ。
だがそれでも鬼道財閥の跡取り息子。
天才なのは構わないが、家の方はいいのだろうか?
サッカーなんてやってて跡取りなど勤まるのだろうか?
ニヤリと笑う鬼道有人にああ、こいつもまた一つの影山のお人形(生贄)か、と同情した。
俺はメンバーがいるかと周りを見渡しながら、豪炎寺の位置を確認し、一瞬だけ影山のいる方を見た。
だが睨んだりはしない。
向こうだってこちらを見ているに決まっている。
まだ知られる訳にはいかない。
見られていると思うだけで虫唾が走った。
俺は気持ちを切り替える為に、オレを演じきる為に声を張り上げた。
試合が始まった。
今宵の生贄は運命に捧げられた
(さぁ、始めようか...)
(哀れなお人形さん?)
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