散らせ散らせ、悪の華

□散らせ散らせ、悪の華
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「...ヒック...ヒック、」


真っ暗闇に聞こえてくる喘ぐ声。


啜り泣く男の子の声。


ああ、またかとため息が漏れる。


これは夢。


例え夢だと分かっていても、普通は母性本能が働き、声の主を探すだろうが、私はそうはしない。


だってこれは夢だと分かってるから。


所詮は夢。


現実の私を誑かす過去の記憶を手繰り寄せたもの。


まさにカオス。


そんな幻なんかに私は騙されない。


騙されてなんかやらない。


「たすけて...ひとりはやだよぉ...。」


喘ぎに混じる誰かを求める幼い声。


舌足らずなその声に幼い子供だと気付く。


子供独特の高い声。


私は何故か既視感を感じた。


それはこれを何度も聞いているからじゃない。


もっと昔...、


ああ、昔の私と同じなんだ...。


昔の自分を見るのは(と言っても視界はほぼ0)酷く気分が悪いものだ。


苛々する。


弱いのは嫌いだ。


毎晩こんな夢見せてもらっちゃたまんないね。


そう思い、私は歩き出した。


空間的に声が反響して聞こえるものだから子供が何処にいるのだか分からない。


子供ってあんまり好きじゃないんだよねー。


何考えてんだか分からないし。


騒ぐし、問題起こすし、自分の立場を弁えろって感じ。


すぐ泣くし。


泣いたってみんながみんな助けてくれる訳じゃないのにさ。


ホント苛々する。


自分だってかつては子供で泣き喚いたりしていただろうが、そこは敢えて自分を棚に上げる事で考えない事とする。


自分の直感のみで突き進む。


正直歩いてるのか疑問だ。


正直言って怖くなってきた。


もう諦めようかななんて思った時に見えたのは金色。


ああ、あの子供が泣いてるのか。


なんて分かれば朝が来る。


ああ、目を覚まさねば。







所詮夢なんて



(起きてもあの子供の声が、)


(聞こえてくるような気がするんだ。)








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