散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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私は満腹感と、沙織とカップル限定のケーキ屋でデート紛いのストレス発散によって幸せを持て余した。
自分の完璧な男装に惚れ惚れする。
男装すると少々幼く見えてしまうのはやはりこのキャラ作り故か...。
「奢ってくれなくても良かったのに...。」
申し訳なさそうに、言う姿、可愛い。
遠慮がちなその性格が好きだ。
最近の女の子がいくら可愛いと言っても、好みがある。
清楚系・遠慮がち・控え目などお嬢様系が特に好きだ。
まさに沙織がこのタイプだ。
『だって俺様、一応彼氏でしょー?奢ってあげるのは当然だよ。まぁ、どうしても納得出来ないって言うなら次行ったときに奢ってよ。』
「うん!」
こうして杭弥は沙織とさり気なくもう一度デートの約束をし、ニコニコと笑っていた。
街中を手を繋ぎながら、自分の恋人だと見せ付けるのはひどく優越感を感じる。
きっと第三者から見れば微笑ましいカップルなのだろう。
突然の事に目を閉じることさえ出来なかった。
私は前方から歩いてきた見ず知らずの男(知っている男かも知れないが生憎私は男なんかに興味はない。二次元なら別だが)に腹を刺された。
「テメェなんかに沙織を渡すもんか!!沙織は俺のもんだっ!!彼氏面していい気になんなよ!!」
男はそう言い捨てると走り出した。
なる程、私は沙織の彼氏だと思い込まれて刺された訳か。
男の嫉妬は女よりはマシだろう。
女の嫉妬は醜いが、男の嫉妬は見苦しい。
自分の男装の完璧さに惚れ惚れしながら、そんな理不尽な理由で殺されるのかと怒りが沸いてきた。
私は腹を押さえながら倒れた。
腹部が脈打つのを感じている。
それを沙織が支えてくれた。
沙織は杭弥の血が付こうが気にした様子はない。
「ひっ男の子が刺されたわっ!!」
「誰か救急車をっ!!」
近くに人が集まり、救急車などを呼んでいるらしい。
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