散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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刹那、土の匂いよりも色濃く香る紅の匂い。
死ぬ前に嗅いだ匂い。
血の匂い。
血?
誰の?
何で?
肉体に痛みは無いのに。
そして理解したのは私じゃない誰かが怪我をしたこと。
どうして...?
口にしたくても赤子の声しか聞こえない。
「ナルト...、」
血の匂いに混じって聴こえた母クシナの声。
その声は酷く弱々しかった。
怪我したの?
そんな私の質問も伝わるはずもなく、消えて行った。
ちゃんと部屋を掃除する事など衛生を保つ事、好き嫌いせずに野菜をしっかり食べる事、明るく元気で風邪を引かない事等、母親らしいクシナの言葉。
私の...ナルトの事しか、言ってないじゃない。
少しは自分の事話して欲しいよ。
続いて音を発したのは父ミナトの方で、こちらもまた苦しそうだ。
何で苦しそうなの?
怪我したのはお母さんだけじゃないの?
「言いたいことは殆どクシナが言っちゃたからね、俺からは特に言いたいことはないけど....、ごめんね...ナルトの成長する姿を見れないのが残念だよ...。」
何それ 、まるで今から死ぬ人みたいじゃないか。
再び謝罪の言葉。
「ごめんね...、」
あまりに優しく、悲しい声。
きっと本人は泣きそうな顔をしているのだろう。
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