散らせ散らせ、悪の華

□散らせ散らせ、悪の華
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拝啓、あの世にいるお父さん、お母さん。


私は今、本屋にいます。


店頭に並ぶ本は色んな種類の物があり、子供が読むような絵本から漫画、アダルトな本などいくつもあった。


私は主に一人暮らしに役立ちそうな料理の本、それから収納の本などを両腕で抱えて持った。


私の、ナルトの存在に気付いた店主が私を突き飛ばす。


「化け狐が!!」


両腕で抱えて持っていた本が地面に落ちるのと私が地面に尻を付くのは同時だった。


痛みなんか無かった。


ただ呆れた。


店主の声を聞き、ぞろぞろと里の人間が集まり出す。


あっと言う間に私は囲まれてしまった。


この里って変に団結力あるよねー。


もっと他の所に活かせよばーか、なんて心の中では貶す。


口に出そうものなら生意気だとかなんだとか理由をつけて暴力を振るうに違いない。


ああ、今日もまた憂鬱が始まる。


そう思った刹那、


「大人気ないですねー。」


と、なんとも気の抜けた声が聞こえた。


見上げれば銀色。


「大丈夫?」


年齢からすれば彼は20歳くらいだろう。


銀髪の所為で少し老けて見える。


銀色の青年はナルトの姿をした杭弥の傍にしゃがみ込み、手を差し伸べた。


その手を振り払う事だって可能だったが、ここは彼に付いた方が楽を出来そうだ。


『あり、がと。』


戸惑いながらも短く素っ気ない態度でその手を杭弥は小さな手で掴んだ。


助けなくたって良かったのに。


でもいい人だと思ったのは内緒だ。


銀色の青年は杭弥が先ほど買おうとしてた本を拾い上げた。


「んー、料理に収納、節約の本かー...あんまり子供が買うような本じゃないよね。」


子供らしくなくて悪かったね!!


『...ひとりぐらしする、からだってばよ....。』


小さめに若干反抗的に呟かれた言葉は銀色の彼に届いただろうか?


勿論若干舌足らずのだってばよ口調で話すのを忘れない。






黄色い閃光の息子と白い牙の息子



(どちらも)


(英雄の息子である。)








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