散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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その日によって来る人数は変わる。
しかし今日は特に危なかった。
夜に一人の包丁を持った男を先頭に何人かの里の人間がアパートのドアを蹴破って入ってきたのだから。
誰がドアの修理代払うんだよ。
寝る時など主に家事以外の室内の事はナルトに任せてあるので必然的にナルトが主導権を握っている為、寝込みを襲われれば一溜まりもない。
ナルトが見たのは家庭用の包丁、それから怒りや憎しみに支配された瞳。
ナルトは戸惑い、困惑した。
「残念だったなぁ、化け狐。」
「今日は守ってくれる騎士(ナイト)はいないぜ?」
野蛮で下賤なな笑い。
ひどく醜くひどく恐ろしかった。
包丁による痛みや死ぬかもしれないという恐怖でも、怒りや憎しみに染まった人間でも瞳でもない。
いつか、私がその目をする...いや、もうその目なのかもしれない。
そんなひどく恐ろしい目をする私をナルトに見られたくない。
怖がられてしまえば私は生きにくい。
だってナルトからは離れられないのだから。
そんな事を思考の隅に、杭弥はナルトの中で溜め息を吐いた。
気持ちの切り替えでもある。
溜め息とは便利なものだ。
ナルトの心臓に向かって包丁が振り下ろされる。
殺されそうだった。
―――仕方無いなぁ...。
杭弥はナルトの主導権を無理に奪い、反射的に右に移動し、包丁を避けた。
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