散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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朝起きればナルトの嗅覚を刺激する朝食の香り。
杭弥が作っているのかと思い、ナルトは目を擦りながら台所に立つ人物を見た。
しかしそこに立っていたのは見知った緋色ではなく、漆黒だった。
ナルトはそこに立つ人間に喫驚し、すっかり目を覚ました。
「な、なんでいるんだってばよっ!?」
ナルトの声に振り返った彼は昨日見た顔で(稀に見る美人だったので初めて会った時に女かと疑いを持ったのでよく覚えている)。
「俺はナルト君の護衛兼世話役なのだから当たり前だろう?」
なんの躊躇もなく出て来た言葉にナルトが素直に納得する訳がなく。
「おれはごえいもせわやくもいらないってばよ!!」
昨日と同じ言葉。
だが一応任務なので子供の我が儘を尊重し、このまま任務を放棄する事は出来ない。
何しろ依頼人は三代目火影自身なのだから。
そんな想いも知らずナルトは杭弥を狙っているのかもしれないと思うと更に警戒を強めた。
杭弥を狙う奴は敵だとナルトの中では認識されている。
ナルトは着替える事もせずに家を飛び出した。
イタチは作りかけの料理とナルトが出て行ったドアを見て小さく息を吐いた。
困ったような顔だったが嫌そうな顔をする訳ではなかった。
杭弥はナルトが何故飛び出したか分からずに困惑した。
―――ナルト、どうしたの?
ナルトは杭弥の声すら無視し、走り出した。
―――ナルト、聞いてるの?走ったら危ないよ?聞いてる?
呼び掛けても返事はなく、杭弥の声など聞いていない。
杭弥は諦めて呼び掛けるのを止めた。
ナルトは杭弥の言葉も聞かずに走っていた為に、人にぶつかってしまった。
ほらね、言わんこっちゃない。
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