散らせ散らせ、悪の華
□散らせ散らせ、悪の華
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ナルトが見たもの...、それは見知った緋色で。
「杭弥...?」
杭弥がナルトを庇うように両膝を付いて抱き締めていた。
そのお陰でナルトが傷付く事はなかった。
『うん、ナルトが無事で良かった。』
痛みなんて感じない。
ただ刺されてる感覚と血が脈打つのを感じるだけ。
男が駆け足で逃げて行くのを聞いた。
「杭弥、ちが...!」
ナルトは杭弥の背中にナイフが刺さり、そこから血が滲み出ているのを見た。
杭弥は肩に刺さったナイフを乱暴に抜き取り、壁に投げ捨てた。
その際杭弥は顔を歪める事なく、いつもと変わらなっかった。
痛くないのかと問えばきっと杭弥は痛くないと嘘でも言ってくれる事を物心付いた頃からの長いとも短いとも言える付き合いのなかでナルトは嫌でも知った。
カシャンと軽い音を立てたナイフは杭弥にこんなにも大ダメージを与えたと言うのに、そのナイフの音が余りにも軽い音なので大した事ないと言っている杭弥の様で切なくなった。
臙脂色の着物がより濃く染まる。
『大丈夫、痛みなんて感じないから。』
ジワリとナルトの瞳が潤み涙が溜まる。
『泣かないで。ナルトはただ笑っていればいいから。』
「杭弥がけがしてるのに、わらえないってばよ...、」
嗚咽に混じって聞こえた言葉に杭弥はナルトの頬に伝う涙を拭い、困った様に笑うしかない。
「そこで何している?」
後ろから聞こえた声に杭弥はゆっくりと振り返った。
見覚えのある黒。
うちはイタチだった。
刹那、黒い刃が飛んでくる。
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