思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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こうして蘭丸君と話すのは去年蘭丸君が教科書かノートを借りに来る度の事務的な会話と世間話とたまに学校で会う時の挨拶程度だった。

やっぱりクラスが違うというだけで交流って結構変わるよね。

今年は拓人君も蘭丸君もクラスが同じでとてもうれしいと思っているがもしも忘れ物した時に私は誰に借りに行けばいいのだろうか…。

今年のクラスは違うのだが、去年同じクラスだった倉間君には嫌われているから貸してもらえる自信が全くないのたけど。

まぁ、それは自分が悪い事は百も承知だし、仕方のない事だとわかっているつもりだ。

結論から言えばおしゃべりでつい失礼な事を口走ってしまうこの皮肉屋な口が悪いのだ。

中学生になったからって自分のキャラ作りがよくなかった。

結局嫌われるなんてオチだ。

昔から同学年の子たちには馬鹿にされてきたからそれほど期待していなかったが、先生等のある程度年の離れた人に好かれている事を知っていたからまぁ、死にたくなる程の孤独を味わった事はなかった。

大人から好かれている私は周りから贔屓だと罵倒の雨が降ってきたが…。

保健室の窓側のベッドに拓人君を寝かせた監督と先生は入学式等があるということで保健室を出ていった。

私は思い切って何があったかを聞く事にした。

拓人君は私をサッカーから遠ざけたがっていたから、寝ている間がチャンスだ。

「ねぇ、蘭丸君。何があったの?それにあの人たちは何?新手の道場破り?」

あ、でも道場じゃなくてグラウンドだからグラウンド破り?それともフィールド破りかな?なんて言ったらきっとこのシリアスな空気が壊れる上にきっと蘭丸君は何があったのかを教える前にツッコミを入れる事は幼馴染という間柄か、わかっていた為に言いたい気持ちを抑えて言葉を飲み込んだ。

蘭丸君は私から直ぐに目を逸らした。

人の目の逸らし方で何を隠しているのか大体分かるようになっていた。

恥でもなく、悩みでもない。

これは躊躇いの視線だ。

蘭丸君は4秒程言葉に悩んだ末に口を開いた。

「…フィフスセクターの人間だ。詳しくは、言えない…」

拓人君の様子を見るフリして俯くのに罪悪感の様なものを感じ、同時に自分には聞かないでほしいという一種の責任逃れのようなものを感じた。

私が踏み込むべきではないと言っているようでもあった。

目を逸らすのが隠し事があると誰だって分かる。

まぁ事実私だって信用している二人に言っていない事だってある。

信用している、信頼はしない。

信じているけど、頼ったりはしない。

きっと一緒にいるのも迷惑になる。

詳しく言えば一緒にいるのを見られる事だが。

変な噂だとか、そういう世間体を気にしだすときりがない。

小さく呻き声を上げて拓人君が目を覚ました。

「拓人君!」

「大丈夫か?」

うっすらと目を開けて拓人君の目が宙を彷徨う。

「霧野…泉…」

拓人君が私と蘭丸君の顔を交互に見た。

「このまま目が覚めなかったら蘭丸君に愛のキスで目覚めさせてとか言おうと思ってたよ」

「何があったんだ…」

それは私の頭の事か。

拓人君や蘭丸君にたまにしか見せない不思議ちゃんモードですがなにか。






もちつけ!いや、落ち付け!


(あれ、完全にもう入学式始まってない?)

(二人と久しぶりに話せたからまぁいっか!)


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