思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「剣城君剣城君。剣城君は寂しくないの?」

私は唐突に剣城君に尋ねた。

「は?」

帰ってきた言葉は私の求めるものではなく。

「だっていつもひとりでいるんだもん」

「あんただってそうだろ」

確かに私もひとりでいる事が多い、いや、基本的にひとりだ。

「うん、でも私幼馴染がいるから…まぁ、いじめの件については知らないけど」

ひとりでいても、なんとなく、心は繋がっているなんて自惚れていればあまり辛くはなかった。

事実を確かめずに自惚れてみたりしてバカみたいだ、なんて思っていても本人達に聞く気にはなれない。

「幼馴染…?」

「剣城君も知ってると思うよ?拓人君と蘭丸君…」

名前を聞いた途端剣城君の表情が険しくなった。

「あんた、あの二人に俺の弱みでも見つけて来いとか言われたのか?」

酷く怒った様な、辛そうな顔。

「え?ちっ、違うよ!!」

「あんたには失望した…」

そう言って剣城君は背を向けて行ってしまった。

き、嫌われちゃった。

というか話聞けよ。

今まで感じた事のない様な胸の痛み。

今までは言葉なしに別れを告げられてきた。

だけどこうやって口に出して言われると、凄く応えるものだと気付いた。

泉は寝転がり、空を見上げた。

今の気持ちを表す言葉はなんだろうか。

怒り?悲しい?切ない?苦しい?辛い?虚しい?虚無感?失望?

失望したのは剣城君か...。

…失望した…?

それってつまり剣城君は少なくとも私に何か期待していたということか…。

私は裏切ってしまったのか。

裏切りって単語から直ぐに斬滅するとか連呼する某戦国ゲームの狂王様な石田三成が浮かんできてしまう。

ああ、私、剣城君に斬滅されてしまうのか…。

よく考えてみればこの二人似てるかも。

なかなかデレないツンデレな所とか、暴力的な所だとか。

あーあ、この腐った脳味噌もなんとかしなければ。

これが乙ゲーなら失敗なんてしなかったのに…なんとかしなければって考えたそばからこれだよ。

これだからオタクは。

泉は自嘲の笑みを浮かべた。

幕末乙ゲーの千鶴ちゃんは新選組に、星座擬人化乙ゲーの月子ちゃんは星月学園の彼らに出会う。

始まりは唐突で、幸せに暮らしましたで終わるのがほとんどだ。

二次元、夢物語、お伽話。

問題はこれらが実現しないという事。

実現するのはアクシデントで始まり、後味の悪い終わり方をする物語。

大抵は悪夢が現実のものとなる。

"幸せに暮らしました"ってフレーズを作った人は、思いっきり痛い目にあうべきだと思う。

非リア充がリア充爆発しろ!って言うのはこれと同じ。

"昔々"、"幸せに暮らしました"。

語られる夢物語。

お伽話は実現しない。

現実はもっと荒々しい。

もっと暗い。

もっと恐ろしい。

現実は幸せに暮らしましたより面白い。

お伽話を知らない人は幸せになれると聞いた。

それはお伽噺のようなロマンスも期待もしないからだそうだ。




失望と現実


(滑稽だね。)

(何故か自然と笑みが漏れた。)



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