思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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私はコンビニの袋を持ち、蘭丸君のいるベンチへと急いだ。

会場を見れば既に後半は開始されていた。

剣城君が8番の子から強引にボールを奪い、一気に飛び出した所だった。

ひとりで戦う気…!?

そんな無茶な。

そんな事より、蘭丸君の方が先だ。

「ら、蘭丸君!」

息を切らしながら名前を呼べば試合を見ていた人もこちらに向く。

ちょっと気まずい。

「えと、あのっ、氷を届けに…!」

「泉!」

立ち上がろうとした蘭丸君の表情が歪む。

苦しげな表情でも美形だから様になる。

美形は人類の勝ち組だよね。

「座ってないとダメだよ!」

私は慌てて駆け寄り、蘭丸君を座る様に促した。

買って来た氷を蘭丸君の足首に当て、赤く腫れている所を冷やす。

「少し休んで行ったらどうだ?走ってきたんだろ?」

「あ、うん」

言われるがままにとりあえず蘭丸君の隣に座ったはいいが、なんか、うん。

場違いな気がする。

そしてここから出るタイミングを完全に逃してしまった。

小さくため息。

フィールドを凄く近く感じる。

ここからの方が比較的に声が聞こえる。

声も何を言っているか聞きとれる。

私は人の背後から影みたいなのが出てきたのを見た。

「なに、あれ…」

小さく呟けば、蘭丸君から答えを貰った。

「そうか、泉は初めて見るのか。あれが化身だ」

「化身…」

小さく復唱し、じっと見つめる。

話によると拓人君や剣城君も出せるらしいだとか。

化身使いが三人も…なんて勝利を諦める人が数名。

「でもあの三人凄く疲労してる。体力的な問題では多分、勝てる。数が多くたって、質が良くなければ簡単に崩せるよ」

「簡単に言ってくれるな、泉」

蘭丸君の言葉に少しの重みを感じた。

だけどそれに気付かないフリして私は、壁を作る言葉を言った。

「所詮は他人事だからね」



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