思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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ジャージだった為に背番号は見えなかったが、確か彼は8番の子だ。

もう一人は私よりもずっと背が低い男の子。

倉間君じゃない。

ここで倉間君の名前出した時点で私大変失礼だわ。

ごめんね、倉間君。

直接顔を合わせたことはあるが、二人の名前を知らない。

二人はボールを蹴り合っていた。

私も小学校の低学年のころは拓人君や蘭丸君に混ぜてもらって3人でボールを蹴り合った事がある。

高学年に上がるにつれて実力差に気付けるまでに成長した私は自分に失望した。

それで自棄になってサッカーを避ける事になった。

努力が足りなかったと言えばまぁ、そうなんだけども。

多分愛も足りなかったと思う。

愛があれば多分サッカーをやめるなんて事無かったと思う。

きっと陰で私だって努力したに違いない。

今となっては仕方ない事だ。

高く蹴られたボールが飛んできて、それを反射的に手で受け止める。

目を瞑ってもキャッチ出来た自分を褒めてやりたい。

「すみませーん!」

こちらに駆けてくる8番の子と小さな男の子。

私も階段を下り、彼らに歩み寄る。

階段の途中で彼らとの距離がちょうどボールを手渡せる距離になった。

「大丈夫ですか!?」

小さな男の子が私に問いかける。

段差の所為で私の鼻の高さに8番彼の頭がある。

人を見下す気分になれるのは倉間君くらいしかいないかなと大分前に思ったが、どうやらここでも人を見下せるらしい。

それよりも上目づかいで見上げる彼らは可愛らしい。

わざとなの?

持って帰っていいってこと?

煩悩退散!

「うん」

短く返事をしてサッカーボールを差し出す。

「ありがとうございます!えっと…、」

受け取った8番の彼は視線を泳がせながら何か悩んでいるようだ。

なんだ、何があるって言うんだ。

「霧野先輩に氷届けた人ですよね…?」

意外にも8番の彼は私を覚えていた。

フィールドから私の姿を見たのだと思う。

ダメじゃないか、ちゃんと試合に集中してなければ。

もう終わった事だからもうどうしようもないが。



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