思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「で、鍵は?」

「職員室でしょ、普通」

まぁ、私も持っているけどとは言わないでおく。

ホントは鍵とか持ってちゃいけないし。

仮に私が鍵を持っている事を剣城君に伝えても、鍵を渡せないから意味がない。

さらっと率直に言えば怪訝そうな顔をされてしまった。

「は?」

「つまり剣城君に私の飼い犬みたいに持ってこい遊びをさせるんです。さぁ、鍵を持ってきて下さい」

私の言葉に剣城君は変な顔をした。

なんだ、何がいけないんだ……ああ、そうか、犬に敬語は使わないよね、通常。

「ゴメン、言い方悪かったね。犬に敬語なんて使わないもんね。さぁ、剣城君、持ってこい!」

「あんたホント懲りないよな」

もう怒り通り越して呆れている…いや、飽きれている。

「だからこうやって閉じ込められちゃうんだよね」

「自覚あるなら学習しろよ」

「私は老犬だから新しい芸は覚えられないよ」

つまり学習はできない。

犬は剣城君じゃなくて、私か。

軽い冗談を言って現実逃避。

冗談が大分板についてきた。

図々しさの表れだ、うん。

「取り敢えず大事にしたくないので隣の教室に来て下さい。そして背中に天使の羽根でも携えて私に救いの手を差し伸べて下さい」

私は剣城君を隣の視聴覚室の方へと指を指して誘導させる。

このまま帰られたらどうしよう。

ちょっと不安だ。

だって変な事言っちゃったし。

ドアから窓の方へ移動し、窓から身を乗り出せば髪が風に浚われる。

足を置く場所を確認し、窓枠に足を掛ける。

捲れるスカートを押さえ、両足を外に出す。

ゆっくりと足を置く場所に、体重を少しずつ乗せる。

こ、壊れたりしないかな…?

「ほら、さっさとしろ」

声の方に顔を向ければ剣城君が手を伸ばしてくれている。

見捨てたりしなかった、ちゃんと助けに来てくれる。




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