思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「剣城君!」

呼んだって振り向かない。

私が剣城君を動かすなんて無理なのは最初から分かっている。

「ゆっちーに剣城君がデレてくれないと報告しちゃうよ!」

ゆっちーを使った脅しは最後の砦と言ってもいい程だ。

頼むから私に脅させないで。

脅すとかホントはしたくないんだ。

尻ぬぐいが出来ない、最後の仕上げの段になるとビビっちゃう弱虫なんだ。

マジ泣いちゃいそう。

頼むから脅させないで、ホントに。

私の為を思って折れてくれ。

それでも無視されるということはそれ程までに私の裏切り行為は酷かったと言う事だ。

「待って、説明させて!」

わざわざ走って剣城君の前に回り込み、両手を広げ、行く手を阻む。

これこそ最終手段だ。

最終手段いくつあるんだ私。

これじゃあ最終手段じゃないぞ。

「いつもそういうよな」

やっと喋ってくれた。

状況は未だに良くない。

いや、寧ろ悪い。

似たような経験はある。

「今私が何を言っても言い訳にしか聞こえないと思う」

「なら言わなくていい」

剣城君は徹底的に私と話をしたくないらしい。

「でも聞いて、説明させて」

「それはあんたの自己満足だろ」

グサリ、心に今までで一番刺さった。

お腹の辺りが強く脈打ち、喉に何かが詰まったみたいに上手く呼吸が出来ない。

事実を突き付けられるのは…苦しい。

自分が悪いと分かっている。

「…やっぱ、無理っ」

私は走ってその場から逃げ出した。

今度は追いかけられなくて正解。

私は人のいない場所まで来ると壁にもたれ掛かり呼吸を整えようとした。

そして涙を流した。

被害妄想もいいところだ。

耐えられない事に直面すると後退し、泣いて…。

まるで被害者面して同情を誘おうとしてるみたいで嫌だ。

そういう所が嫌いだ。

出来る事ならもっと強く生きたい。

立ち向かえなくていい、せめて泣かないでいられるようになりたい。

最近は人を避けて生きてきたから泣くのは久しぶりかもしれない。

…いや、この間録画しておいたアニメの劇場版間違えて消した時に泣いたか。

何とかしてもう一度剣城君と話さなきゃ。

どうしても話さなきゃ。

ちゃんと話さなきゃ。

なんとしても話さなきゃ。





こんな事望んでない


(守ると言ったのに、)

(傷付けてるのは君じゃない…!)




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