思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「挑戦しなければなにも始まりません。お願いします」

松風君は深く頭を下げた。

倉間君は松風君に背を向けた。

「これだけやっても上手くいかないのにどうやって成功させるんだよ」

「諦めるな!諦めない奴だけに掴めるものがある」

皆が俯く。

「俺を出せ!」

聞き覚えのある声。

「剣城君…!」

「俺を試合に出してくれ」

「今度は逃げないのか」

逃げるとか逃げないとか私と同じ事言ってるよ、拓人君。

「シードじゃない、一人のサッカープレイヤーとして頼む…!」

私の時は反抗したのに拓人君は無視のパターンか、拓人君カワイソウに。

「信用できる訳ないだろ!」

倉間君の強い言葉。

それはみんなも同じような事を思っている。

どうしてみんな剣城君を悪者扱いするの?

ねぇ、どうして?

剣城君は私の唯一の友達で、私を助けてくれたのに…たまに喧嘩するけど。

…ああ、私が嫌な奴だから剣城君も嫌な奴と言う判断なのね。

それは濡れ衣だ。

ごめん、剣城君、私の所為で…。

揺れる剣城君の瞳。

動揺?ううん、もっと前から動揺していた。

「決めるのはお前らだ」

円堂監督は選択権をサッカー部に与えた。

こんな状態で試合に出てもきっとダメだ。

ここは私が何とかして緊張感だとかをほぐさなければ。

一人がやると言えば次々とやると言い出すのが日本人の特徴だ。

他人がやっていることは自分もやりたくなる。

赤信号みんなで渡れば怖くない作戦であり、白い家しかない住宅街で一人が青く壁を塗れば次々に壁を青く塗ろうとするのと同じだ。

気持ちなんて伝染するものだ。

だったらきっかけをつくってやろうじゃないか。

「私は剣城君を信じてるよ!」

私は一歩強く踏み出し、剣城君を強く抱きしめた。

誰から見てもこれは衝撃的かもしれない。

人と関わりを避けてきた私が自分から他人に触れるなんて信じられないかもしれない。

事実私は人に触られるのとか苦手だ。

これはただのハグじゃない、抱きしめる事によって交感神経を抑圧して落ち付かせている。



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