思い出した、人類は皆平等だった
□思い出した、人類は皆平等だった
1ページ/1ページ
校門を潜ってすぐ聞こえてくる声。
挨拶を交わす生徒たちの声に紛れていても聞こえるボールを蹴る音。
今日も練習してるんだ。
…あれ、なんだろ、おかしいな。
私には剣城君が部活に出ているように見えるんだけど…。
うん、幻覚が見える様になってきたのかな。
疲れてるんだよ、私、きっとそうだ。
昨日録画しておいた番組見てて気付いたら夜中の3時とかだったからね、睡眠時間が短いのがいけなかったんだな。
目をぱっちり開けてごらん泉、あれは幻覚よとか自己暗示をかけながらグラウンドに近寄る。
ちょうど朝練が終わる所らしくマネージャーがドリンクやタオルを渡そうとしていた。
「何見てんだよ」
ボーっと剣城君を見てれば怪訝そうな顔された。
「幻」
「何が幻だ。俺は本物だ」
「何、どうしたの?朝練なんてするキャラだっけ?」
今度は私が怪訝そうな顔をする。
「文句あるのか」
「ある訳がないよ。ただ新鮮だと思ってね」
とか言いながら鞄からカメラを取り出し写真を撮ろうと電源を入れ、構える。
携帯なら直ぐに起動できるし、撮影も速いからいいんだけどやっぱカメラにも収めたいからね。
「おい、盗るな」
電源入るの遅いから剣城君に捕まっちゃったじゃないか、仕事しろよ、カメラ。
「ちょ、レンズ触んないでよ、指紋付く!」
あ、鞄の中で電源入れればよかったのか。
しくったわ。
今度はちゃんと電源つけてから鞄から出そう。
そしてしくったのは朝の光景と低血圧理由にしよう。
「なんでカメラ嫌なの?魂とられるとかそういう考えの持ち主なの?考え方古いね!」
「写真をどうする気だ」
写真?そりゃあゆっちーに日ごろの剣城君を見せてあげようと…。
うわぁ、私ストーカーチックだ。
「え、そりゃあゆっちーに、ね…?」
「やめろ」
周りからの怪訝そうな視線が突き刺さるが剣城君はそんな事お構いなし。
変な所で空気が読めない剣城君。
この後ミーティングあったらスンゴイ迷惑だぞ剣城君。
私が原因か。
「じゃあ心霊写真って言ってイシドさんとこ持ってく」
「いちいちあの人に関わるんじゃねぇ」
冗談のつもりで言ったのにそんな真剣な顔して言うもんだからおかしい。
こういうのを滑稽とでもいうのだろうか。
おかしいはずなのに、なんだか泣きそうになる。
それはやっぱり、私の恐ろしい活動の結果が招いたトラウマなのだろうか。
信じがたいほど愚かで、信じがたいほど甘くて、信じがたいほど無責任。
だけど信じがたいほど勇敢な私の行動はもう自信喪失級のトラウマだ。
それとも私の知るイシドさんが剣城君の知るイシドさんではないからなのか…。
カメラの電源を消して鞄の中に仕舞った。
朝から幽霊
(貴方が見える…。)
(本物だからな。)
(いや、ナヴィっていうオマティカヤ族だよ。)
.