思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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私は鞄から大きめのタッパとプラスティックケースに入った爪楊枝を出した。

タッパの中ではシフォンケーキが辛そうにぎっしりと詰まっていた。

「だいぶ前の話なんですが、試合の時にベンチ席に座らせていただいたお礼がしたいと思って持ってきたんですが…」

「おお!うまそうだド!」

天城先輩が手を伸ばすが、シフォンケーキに触れる前に身を引いて天城先輩の手を回避した。

「食べるのは、手を洗ってからにしません?」

「それじゃあ少し休憩にしましょう!」

音無先生の言葉に皆ワラワラと団体で移動していく。

多分、手を洗いに行ったのだろう。

みんなお行儀がいい様で結構。

手を洗ったサッカー部の彼らが戻ってくる。

ハンカチを持ってないからってお尻のあたりで手拭いてなければいいけど…。

その為の爪楊枝ではあるが…。

爪楊枝を持った彼らがタッパの中のシフォンケーキをつっついていく。

爪楊枝の刺し方が悪かったのかシフォンケーキを食べようとした時に重さでくるりとシフォンケーキが回る。

拓人君が落ちそうになったのかと一瞬慌てた姿が可愛かった。

「泉の手作りなんて久しぶりだな」

「小学校以来だよな」

蘭丸君が見た目よりもずっと男らしくシフォンケーキを一口で食べたのには少し驚いた。

人は見た目によらないって事だ。

確か小学校のレクリエーションで蘭丸君結構クッキー食べてたな…。

なんだか懐かしいや。

松風君は爪楊枝がなかなかシフォンケーキに刺せないようだ。

やっぱりリンゴみたいに硬さがないから上手く刺さらないみたいだ。

今度はもっときめ細かくなるよう作ろう。

段々松風君が試食コーナーに来てなかなかウィンナーに爪楊枝が刺せない子供みたいだ。

なんだか可愛い。

かして、というのと同時に松風君から爪楊枝を奪い、代わりに刺してあげた。

「あ、ありがとうございます!織武先輩!」

松風君は嬉しそうに笑う。

松風君はなんだか放って置けないタイプだ。

愛されるべきヨッパライタイプって言うのかな?



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