思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「…マネージャーやらないか?」

鬼道監督の文脈のおかしい言葉で、何の脈略もない言葉に私は目を見開いた。

嬉しいですって言った後に丁重にお断りさせていただきますって言うのと同じくらいおかしい。

きっと私の顔が見えなくても鬼道監督は私が驚いている事に気付いていると思う。

だって彼は天才ゲームメーカーなんだから。

鬼道監督が何を考えてるか全く分からない。

だけど、鬼道監督は私に対して警戒心が薄すぎるんだ。

それはきっと机の上のバクテリアと同じように、バクテリアがギャーギャー騒いでいても気にしないのと同じなのかもしれない。

弱い奴には警戒しなくていいっていいうのと同じことなのだと思う。

私は人差し指を立てて鬼道監督に向けて拳銃の真似事をした。

「バンッ」

私に口から出たのは随分と間抜けな擬音語。

「?」

「もし私が拳銃を持ったフィフスセクターからの刺客だったら今ので鬼道監督は死んでいますよ。もしかしたらシフォンケーキの中に睡眠薬とか入っていて、鬼道監督を誘拐するかもしれなかったんですよ?前言撤回するなら今の内ですよ」

これは脅迫の一種かもしれない。

脅迫罪で訴えられて警察行きになるかもしれない。

この年で前科ありとか勘弁したい。

「…だが俺はこうして無事だ。つまりお前はフィフスセクターからの刺客じゃないと言う事だ。だから前言撤回はしない」

「私をマネージャーにしていいと本当に思っているんですか?」

鬼道監督は微動たりせずに私をじっと見ていた。

鬼道監督は意見を変える気はないらしい。

意外と頑固だな。

「私が朝言おうとしていた事、本当は私はフィフスセクターから送られてきた剣城君の監視者だって言おうとしたんです。その事は円堂監督も知っていますがね。まぁ、残念ながら私が二重スパイしようとしていたのがバレて直ぐにクビでしたが…」

私はクビを現す様に親指を立てて横に引いて、肩を竦めて見せた。

「やっぱりお前は信用できる」

その一言が、妙に重く感じた。

同時に嫌悪に近い何かも感じた。

どうしてそう思ったか自分でも不思議だ。



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