思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
2ページ/2ページ




看護師である冬花さんが言った言葉に、止まりかけていた呼吸がやっとできて、大きく息を吸い込む。

冬花さんの言葉に私は安心した。

そして首を振った男をキッと睨みつける。

誤解を生む様な動きやめてくれないかな、ホント。

私が手術室へ運ばれる所だったわ、心臓が止まりそうになった的な意味で。

くそ、先生を手術室に運んでやろうかとか一瞬物騒な考えが浮かんだ。

これはもう、このヤブ医者めと罵りながら蹴っ飛ばして病院送りだ。

医者が救急カートで手術室送りなんて傑作だ。

「一カ月は安静!?」

「暫くはギブスで足を固定する事になるでしょう」

「決勝戦には出られないってことですか…」

「残念ですが…」

「先生!なんとかならないんですか!キャプテン、これまで頑張ってきたんです!ホーリーロードで優勝する為に、ずっと…お願いします!キャプテンが決勝戦に出られるようにしてあげて下さい!お願いします、先生っ!」

松風君は頭を下げた。

声が少しかすれていた。

「できるものなら私もなんとかしてあげたいが…」

先生は業務的にそれだけ言うと去っていった。

…使えねェな。

おっと、失礼、口が滑りそうになった。

三国先輩がとても悔しそうにしていた。

キャプテンがいなくなるって言うのもあるし、何より一緒に戦って来た仲間が一人欠けるというのは相当堪える。

私に治癒系の特殊能力があれば…なんて考えてしまうが、生憎そんな能力はない。

とても残念だ。

日が暮れる午後の事だった。

夕陽を見ると悲しくなるという人がいるが、この悲しみはそれではない。






こんなのってないと思う


(夢なら覚めて欲しいと思う。)

(三秒数えればきっと現実に戻れる。)



.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ