思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
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「泉ちゃんって京介の事好きなんでしょ?」

「えっ?」

心臓がドクリと大きく脈打つ。

「どうしたんですか、急に。私前にも言いましたよね、剣城君も好きだって」

「いや、そうじゃなくて、ちゃんと恋愛感情で好きなんじゃないの?って事」

「そ、そんな事ないです!」

張り上げるような声で、私の口から出た言葉にあまり説得力はなかった。

ギュッと手を握り、その手を見つめる。

認めちゃダメだ。

だってそれはつまり私は浮気してるって事でしょ?

しかも相手がゆっちーの弟ときた。

もしこれで結婚してた場合アレだ。

旦那の弟に手出すって事でしょ?

不倫の域を超えて犯罪だ。

一種の近親相姦だ、あかん、ありえん。

そんなことしたら私本格的に自分嫌いになるし、人としてちょっと死にたくなる。

寧ろ一回死んだ方がいいと思う。

そんなの許せない。

恋人を裏切るなんて最低だ。

傷付けたい訳じゃない。

ゆっちーと別れたい訳じゃない。

ゆっちーとの関係は自棄でも剣城君から目を背ける為でもない。

勿論剣城君に構ってもらいたいが為にゆっちーにちょっかい出しているんじゃない。

ゆっちーの事は好きだ。

本気だ。

本気だった。

今でもちゃんと好きだ。

「ちゃんと好きなのに…」

私はゆるゆると首を振った。

「分かるよ、好きな人の事だからね」

その言葉に自然と顔が上がった。

「もう恋人として見てもらえないんだろう?」

ゆっちーは切なそうな笑顔だった。

そんな顔しないで、私が泣きたくなる。

「ゆっちー…」

ゆっちーは私の中で既に恋人ではなくなっているんだ。

もう家族としてでしか見れないんだ。

絆は強い分余計…。

「京介の事、よろしくね」

大体剣城君はゆっちーを悲しませる人が嫌いだ。

きっと私の事が嫌いに違いない。

「ゆっちーは辛くないの?」

「辛くないって事はないけど、いい思い出になればな…って思ってる」

「ゆっちーが初めての恋人で良かった」

これで私とゆっちーとの恋人関係が終わるんだと思うと寂しい。

「一生のお別れじゃないんだから」

「うん…」

そりゃあそうなんだけど、初彼とのお付き合い時間が三ヶ月も持たないってのがショックだ。

尻軽女みたいで…。

「頑張ってね」

「いや、無理ですって、多分私殺されますって。もし明日辺りに私が遺体で発見されたら剣城君に殺されたと思っていいと思います」

「愛しさ余って殺しちゃう?」

「ヤンデレっていうのも結構私好きですけど…憎しみしかないと思いますよ。きっと怒りの塊ヤングスカイウォーカーになりますよ。兄さんを穢し、傷付けた最低ヤローとかなんとか言われるに違いないです。どうやって殺されるんだろ…首絞められるのかな、それとも包丁とかでブスッと?石で殴られるとか?それとも川に突き落とされるのかな。あ、もしかして撲殺?…ああああ考えただけでも色々殺される方法が浮かぶわ。取り合えずデスドロップかデスソードは覚悟してます」

いや、むしろ兄さん(エンジェル)失ったってことで化身技ロストエンジェルとか?

やだなにそれ怖い。

ヤバイ、私DEAD ENDフラグが、死亡フラグたってるどうしよう。

「取り敢えず思い出作りにハグして下さい。歪んだ心抱えて一人で死ぬのは嫌だよ」

「大げさだよ」

大げさだとか言いながらも抱きしめてくれる辺りゆっちーは優しいと思う。

たった今恋人だった相手の我儘よく聞けたな。

うん、交感神経圧迫によって落ち付けられるのいいね。

「ありがとう…嫌いになった訳じゃないんだからね!今でもゆっちーの事好きだからね」

「分かってるよ」

「あとこれは私がフラれたって事で」

失恋にはホットな妹と聞いているが、私には妹はいないからホットな弟でもいいよね。

ああ、イシドさんにかかわいらしい私よりも年上な妹さんがいらっしゃったが、デートなんて不釣合いすぎる。

あ、音無先生は鬼道監督(今はコーチだっけ?でも言い馴れちゃったからそのまんまでもいいかな、なんて…大体監督もコーチも変わんないでしょ。カタカナか、漢字かくらいでしょ、どうせ)の妹だって聞いたけども随分と似ていないなー。

苗字が違うが、音無先生は結婚していたのだろうか…?

結婚指輪してたっけ?

まぁ、音無先生だともっと年齢離れちゃうけどね。






好き


(好きだと言われるのが、)

(辛いんだけどね。)




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