思い出した、人類は皆平等だった

□思い出した、人類は皆平等だった
2ページ/2ページ





「だから…スカートでやるなって意味だ、察しろ!」

半ば叫ぶように、怒鳴るように出た言葉に首を傾げた。

「スカートって割と動きやすいよ?はいてみる?」

「誰がはくかっ!」

仕方なく円堂監督から予備のユニフォームとかを借りてやることに…。

そんな借りるほど長くやるつもりはないんだけどなー…なんて。

剣城君との距離は凄く近い。

お互いに4歩進めば直ぐにぶつかる距離。

私が剣城君に勝てるはずがない。

最初から分かりきった事だ。

でもそれは正当な戦い方をした場合だ。

本気でやられたら堪ったもんじゃない。

相手は中学サッカー界全国大会優勝チームのエースストライカーだ。

そんなのに蹴られたら私は病院行きになってしまう。

病室は雨宮君の隣がいいな。

ゆっちーは個室だし…。

私は剣城君を目の前にし、奮い立った。

「好きだよ、剣城君」

彼にそれを宣言すればたちまち彼は顔を真っ赤にさせた。

その時に隙が出来る。

勿論計算の内だ。

その隙を狙い、剣城君を突破。

突破した途端の達成感と油断から私は転んだ。

ボールが私の3メートル先に転がっていく。

それがなんだか滑稽で笑いが漏れる。

「大丈夫か」

拓人君や蘭丸君が駆け寄ってくる。

それは私の頭の事か。

私は仰向けになり、呟く。

「あーあ、やっぱダメか」

仰向けになるのは自棄になった時の癖だ。

勉強が分んなくなるとその場でこうやって仰向けになって寝転がる厄介な癖がある。

それは幼馴染である二人は長い付き合いの中でいつもの事だと納得できるまでになっていた。

「油断するからだ」

足の方から声が聞こえ、頭を少しだけ上げれば剣城君が私を見降ろしていた。

「油断しまくって私に抜かれる君に言われたくないわ」

「あれはお前が悪い」

そんな赤みの引かない顔で言われても説得力無いなぁ。

「浮かれ女に誑かされた剣城君が悪い」

才能がなくたって、強くなくたって、楽しければいいんだ。

こんなサッカーをずっと誰もが求めてきていたのに、どうして気付かなかったんだろう。

誰もが皆平等に楽しめるサッカー。

それがずっと望んできたもの。

そうだ、やっと思い出した。

人類は皆平等だった。





人類は皆平等だった


(赤面した君をずっと見ていたいなー…。)

(なんて思ったら加虐心が湧いてきた。)




.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ