不浄の華は絶闇で毒を孕む
□不浄の華は絶闇で毒を孕む
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じいちゃんが死んだのだからここをどうしようと俺の勝手だ。
俺は小屋に近付くとドアを開けた。
部屋には棚や古びた本、机が埃を被っていた。
長年誰にも使われてない証拠だ。
「入れよ、豪炎寺」
円堂は豪炎寺を中に入るよう促した。
「円堂、ここは...、」
「じいちゃんの遺産ってとこかな」
その時だけ円堂が豪炎寺には普段の明るい円堂に見えてらしく、おじいさんをとても愛していたんだと豪炎寺は思った。
同時に円堂を闇から救い出す事ができるのは円堂のおじいさんだけだと、自分にはできないと無言で言われたような気がして悲しくなった。
俺は、無力だ...。
だが、俺以外にできる奴は今はいないんだ。
俺がやらなければ。
「円堂、どうして俺にここを?」
「必要になるだろうと思ってな」
円堂は幼かった顔を引き締め、三歩ほど前に進みしゃがみ込んだ。
円堂は絨毯の隅を掴むと捲った。
そこには隠し扉があった。
円堂は隠し扉を開き、机の上にあったロウソクに火を付けた。
円堂が闇に向かって降りていく。
うっすらと心細い炎が闇を照らす。
それが今の自分と円堂を比喩しているようだった。
今の炎じゃ闇を照らせない
(もっと強くならなければ...。)
(いつしか俺は闇を救いたいと思っていた。)
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