不浄の華は絶闇で毒を孕む

□不浄の華は絶闇で毒を孕む
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「なぁ、風丸、俺達と一緒に来ないか?」



円堂は隠す事なく言った。



「円堂?急にどうした?」



ああ、風丸は俺があからさまに違うと気付いていながらも気付かないフリをするんだ。



そうやって目を逸らしているのもいつまでもつやら。



俺は1分もたないに賭ける。



「風丸、」



そっと甘さを含んだ声で、名前を呼び、頬を撫でてやる。



手の甲に当たる髪の質が思った以上によくて、女みたいだと思った。



いや、その辺の女よりずっといい。



「円堂、」



頬に朱を滲ませ、風丸は身を引こうとしたが、そうはさせないのが円堂だ。



まるで生娘のように震える風丸を見て、可愛い奴だと思った。



勿論異性に抱く様な感情ではない、ましてや俺も風丸も男だ。



まぁ、風丸なら女だと見間違えるほど可愛い顔しているが。



昔はそれで虐められてたっけ?



オレが風丸を助けて以来、風丸はオレについてくるようになった。



俺だってまだちゃんとした純粋でバカみたいにサッカーを愛していた頃があった。



それがそうでなくなったのはじいちゃんが死んでからだったと思う。



いや、正確にはじいちゃんが死んだと理解してからだ。



「俺はじいちゃんおの仇をとる。それにはお前の力が、お前が必要なんだ、風丸...」



まるで悲願するように、しがみ付く様に出た声色。



勿論風丸を落とす為の演技だ。



「俺と一緒に来てくれるよな?」



「円堂、俺はお前に何処までもついていくよ」



ほらな。



風丸は俺の思った通りの男だ。



俺に利用されていると知りながらも傍にいてくれるヤツ。



風丸の気持ちは多分、家族愛に似ていると思う。



無償の愛。



安ワインみたいに頭痛がして、歯が疼くような響きだが、人間誰もが求めるものだ。







甘美で堕落を誘う音奏



(無償の愛なんて今更、)


(求める事なんてしない。)






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