少女XX

□少女XX
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少女は目を覚ました。


ゆっくりと長い睫毛に縁取られたエメラルド色の瞳を開いた。


少女の視界に最初に入った物は床とその上に積もる埃だった。


飴色の髪が長年で降り積もった灰色に犯されていた。


少女は一戸の山小屋のように狭い場所で目を覚ましたのだ。


少女は無知だった。


言葉もその瞳に映る物が何かも知らなかった。


少女の知識は胎児と同じ様な物だった。


いや、胎児以下だった。


食べることも呼吸も知らない。


本能も欲求も分からない。


しかし少女には物事を理解出来るだけの知能があった。


ただそれをどう表現すればよいか、方法を知らないだけ。


人生の目的は苦しみを減らす事だ。


少女はまず呼吸を行った(それを知らないのに)。


目的通り少女は一つ苦しみを減らせた。


少女はまた一つの苦しみを味わった。


埃だ。


埃が呼吸を開始する事によって気管に入り込んでくる。


少女は苦しみを減らす為、少女は咳をした。


横になったまま咳をするので苦しみはますばかりで余計にフワフワと埃が舞う。


少女は床に手を付き起き上がった。


呼吸は幾分か楽になった。


そして少女はまた一つの苦しみを味わった。


飢えと渇きだった。


少女は立ち上がり、外に出ようとしたがどこから出たらいいのか分からなかった。


あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。


ようやく少女はドアを見つけた。


ドアを開けば日光が注ぎ、少女はエメラルドの瞳を細め、腕で目元に影を作った。


光に目が慣れれば無知な少女に取っては不思議で恐ろしい世界が広がっていた。


近くの木に小鳥が止まっていた。


小鳥は木に成っている赤い果実をつついていた。


少女は手を伸ばし、赤い果実をひとつ手に取り、かじりついた。


甘かった。


少女は更に赤い果実にかじりついた。


少女はまたひとつ苦しみを減らす。









目覚める



(人生の目的は、)


(苦しみを減らす事。)








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