少女XX

□少女XX
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少女が目を覚ましてから一晩が過ぎる。


少女は睡眠を取ることを知らない。


故に少女は一睡もしていなかった。


少女は思った。


光の見えないこの場所で誰も活動しないのが不思議で仕方がなかった。


何故何もしないのか。


時間を無駄にしていると思った。


やることはいっぱいあると言うのに。


東の空が白み始め、夜が明けた。


少女は動物の言葉が理解できた。


アメリカ人が英語を話し、中国人が中国語を、日本人が日本語を話す事と同様だ。


幼い頃から聴いていれば自然と身に付く。


少女もまた決して幼いワケではないが、無知な少女の脳には動物の言葉は母国語と同じなのだ。


たとえ種族が違うとしても、彼らの言葉が少女にとっての母国語だ。


少女が覚えたのは人間の言葉ではなく、動物の言葉だった。


少女に取って彼らの言葉は理解しやすいものだった。


それから音の波長と高さ、空気の振動と流れ、独特のリズム。


それらの組み合わせ。


それらを数学と過去聞いた音のデータと照らし合わせれば簡単なものだった。


少女の情報源は彼ら動物達だった。


毎日新しい情報をインプットしていく。


《最近宇宙人ガサッカーを使って地球を侵略しようとしているよ》


一般の人間には理解できない鳥の言葉。


少女には容易く理解出来た。


しかし少女には宇宙人と言う知識もサッカーと言う知識も存在しなかった。


少女は歌うように音を発した。


《ありがとう...》


それは人間には分からない動物達の言葉。









少女の母国語



(それは英語でも中国語でも日本語でもなく、)


(動物の言葉だった。)








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