少女XX

□少女XX
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少女が目覚めてから3日が経った。


少女は生物的に己の体の事を理解したが、自分自身の事は全く分からなかった。


少女は24時間小屋の中にいるわけではなかった。


朝方だろうと昼間だろうと夜中だろうと少女は気の向くときにはあちらこちらへ出かけたりした。


少女は暗闇にも関わらず、ちゃんとまた小屋に戻って来た。


少女が出掛ける理由はいくつかあった。


外の世界に対する好奇心。


時間帯による他の生物との戯れと情報収集。


他の食料探し。


何時までも木になるあの赤い果実に頼っていられるわけもなかった。


あの赤い果実は少女だけの物ではない。


他の生物も食料を必要としているのだ。


少女は多くの生物が活動を停止する夜中に森に来た。


食料を探すためと、彼女の胃袋を満たすために。


そして少女は見つけたのだ。


木苺が沢山なっている木を。


少女は赤々としたそれを一つ手に取り、笑みを浮かべた。


口に入れれば甘い味が広がる。


少女は自然と頬を緩ませた。


これだけあればしばらくは持つだろうと考えた。


しかし問題が起こった。


少女の周りには一匹の肉食の獣がいた。


獣はグルルルと低いうめき声をあげ、少女をどこから狙おうか伺っていた。


獣は威嚇していた。


少女は目の前の獣を見据えた。


獣は低く構えると咆哮をあげながら少女に襲い掛かった。


少女はそれに対し冷静に動いた。


獣の牙も爪も避けたのだ。


普通が出来ないようなことを平然とやってのける。


獣は体勢を立て直し、再び少女に襲い掛かった。


それを避け、少女は左手で獣の首を掴み、仰向け地面に押さえ付けた。


当然獣は暴れる。


それを見越して賺さず少女は膝で獣の首を押さえ、両腕で獣の脚を押さえた。


イヌ科の哺乳類のこの獣にとって仰向けとは、屈服を表すようで、獣は抵抗を止めた。


少女は自分に害がないのを確認すると、獣...一般的に狼と呼ばれるそれの上から退いた。


狼は直ぐに起き上がり、少女と距離をとった。


しかし先程とは違い、獣は少女に襲い掛かることはない。


狼は賢かったのだ。


本能的に少女の方が上だと悟ったのだ。


狼はそのまま森の奥に去っていった。








狼と少女



(お互いが、)


(ひとりぼっち。)








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