少女XX
□少女XX
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少女はゆっくりと目を開けた。
目の前には黒い布。
若緑色の彼のユニフォームだ。
少女はとっさに若緑色の彼から離れた。
しかし腕を掴まれそれ程離れる事は出来なかった。
そして少女は自分達が移動している事に気付いた。
当たりを見回し、逃げることも考えたが、それが今適切な判断とは考えられなかった為、そうしようとは思わなかった。
少女はチラッと若緑色の彼を見た。
冷たい目。
信じない目。
「お前をあの方の所へ連れて行く。逃げようとなど考えるなよ。」
少女はやっぱり言葉を理解出来なかった。
でもきっとその内理解出来るようになるだろう。
少女は腕を引かれるがままに歩き出した。
ずっと同じ様な廊下が続いていた。
油断すれば迷ってしまいそうだ。
しかし少女はこれまで来た道を完璧に覚えていた。
通された部屋はいくつものモニターの付いた薄暗い部屋だった。
「珍しいですね、レーゼ。」
椅子がくるりと回り、着物を着た男性の姿が見えた。
「折り入ってお父様にお願いがあります。」
レーゼと呼ばれた若緑色の彼は唐突に言葉遣いを変えた。
言葉が分からなくとも、少女には隣に立っているレーゼと呼ばれた彼よりも着物の彼の方が権威を持っている事がレーゼの雰囲気で分かった。
「何故彼女を?見た所たいした実力も無さそうですが。」
威圧的な雰囲気。
警戒されているのだと少女は感じ取った。
「彼女は我々の蹴った黒いサッカーボールを蹴り返してきました。それに、」
レーゼはそこで言葉を区切った。
チラッと少女を見る。
「人間の言葉を理解出来ないようです。」
では少女は誰に育てられたのだろうか?
まさかあの狼に?
そんな疑問が生まれた。
「つまり彼女が気に入ったと言う事ですか。」
着物の彼の言葉にレーゼは悩んだ末に肯定した。
「...はい。」
「いいでしょう。ただし彼女の面倒はレーゼ、貴方が見なさい。」
予想以上にいい返事がもらえた事にレーゼは驚いた。
「歓迎しよう。ようこそ我がエイリア学園へ。」
言葉が通じないと分かっていても着物の彼は少女に言葉を発した。
少女歓迎
(言葉も意思も、)
(通じない。)
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