少女XX

□少女XX
1ページ/1ページ







少女はゆっくりと目を開けた。


目の前には黒い布。


若緑色の彼のユニフォームだ。


少女はとっさに若緑色の彼から離れた。


しかし腕を掴まれそれ程離れる事は出来なかった。


そして少女は自分達が移動している事に気付いた。


当たりを見回し、逃げることも考えたが、それが今適切な判断とは考えられなかった為、そうしようとは思わなかった。


少女はチラッと若緑色の彼を見た。


冷たい目。


信じない目。


「お前をあの方の所へ連れて行く。逃げようとなど考えるなよ。」


少女はやっぱり言葉を理解出来なかった。


でもきっとその内理解出来るようになるだろう。


少女は腕を引かれるがままに歩き出した。


ずっと同じ様な廊下が続いていた。


油断すれば迷ってしまいそうだ。


しかし少女はこれまで来た道を完璧に覚えていた。


通された部屋はいくつものモニターの付いた薄暗い部屋だった。


「珍しいですね、レーゼ。」


椅子がくるりと回り、着物を着た男性の姿が見えた。


「折り入ってお父様にお願いがあります。」


レーゼと呼ばれた若緑色の彼は唐突に言葉遣いを変えた。


言葉が分からなくとも、少女には隣に立っているレーゼと呼ばれた彼よりも着物の彼の方が権威を持っている事がレーゼの雰囲気で分かった。


「何故彼女を?見た所たいした実力も無さそうですが。」


威圧的な雰囲気。


警戒されているのだと少女は感じ取った。


「彼女は我々の蹴った黒いサッカーボールを蹴り返してきました。それに、」


レーゼはそこで言葉を区切った。


チラッと少女を見る。


「人間の言葉を理解出来ないようです。」


では少女は誰に育てられたのだろうか?


まさかあの狼に?


そんな疑問が生まれた。


「つまり彼女が気に入ったと言う事ですか。」


着物の彼の言葉にレーゼは悩んだ末に肯定した。


「...はい。」


「いいでしょう。ただし彼女の面倒はレーゼ、貴方が見なさい。」


予想以上にいい返事がもらえた事にレーゼは驚いた。


「歓迎しよう。ようこそ我がエイリア学園へ。」


言葉が通じないと分かっていても着物の彼は少女に言葉を発した。









少女歓迎



(言葉も意思も、)


(通じない。)








.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ