少女XX

□少女XX
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イプシロンが雷門イレブンに10日間の猶予を与えた夜、聞いたことのある心音を聞いた。


だがそれはここで聞くことがないだろうと思っていた心音だ。


エミリーは人目を避けてこっそりと外に出て来た。


「やぁ、エミリーちゃん」


エミリーの存在に気付いた彼が言う。


「どうしてここにいるの?」


思った通りグランだった。


だがいつもと格好が違った。


まるで人間みたいな服装だ。


「様子を見に来ただけだよ」


「私を連れ戻しに来たんじゃなくて?」


エミリーはいつでも逃げ出せるように地面のコンディションを確認した。


「連れ戻すのは俺の役目じゃないからね。どうして俺がいるって気付いたの?」


グランはちょっと不思議そうな顔をした。


「心音が聴こえたから」


エミリーの返答にグランは視線をエミリーの上の方にずらした。


「ああ、成る程」


グランはエミリーの人間ではあり得ない耳を見て理解し、納得した。


「レーゼの一件で俺の事警戒してるようだから言っておくね」


「何を?」


「レーゼは無事だよ。今の所はね」


軽い調子で言われたレーゼの生存には驚いた。


まさかグランがそんな事を言うとは思っていなかった。


「今の所は?時間が経てば無事じゃなくなるの?」


エミリーはグランを睨み付けた。


「エミリー、大丈夫だよ。処分されると言っても記憶を消すだけだから」


グランの言葉にエミリーは少しの安堵を感じた。


だが記憶がなければ意味なんてない。


私にとって記憶こそ全てだ。


記憶をなくすと言うことは培ってきた全てを失うと道義である。


人生において重要なのは強さや知識ではなく、何故生きているのか。


どの文献を読んでも生きている理由は見つからない。




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