第二部:地底の隠れ里
□いざ、三次転職!
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エリニア魔法図書館。
魔法に関するものからそうでないものまで様々な書物で溢れる建物だ。
その中では1人の老人…賢者ハインズがのんびりと紅茶をすすっていた。
「今日も平和じゃのう…。
さて、この書物を片付けたら久し振りにタタモに会いにリプレにでも行くかの。」
そう言ってまた紅茶に口を付けた瞬間、
バターン!
と音がして勢い良く扉が開いた。
「おい爺さんいるか!?」
「じいちゃーん、おっひさー♪」
その後に続くシュウとリュカの声。
だがその声に答える者はおらず、2人が不審に思って図書館内の奥の方を見ると、
「げほっごほっ、へ…ふぇっくしょい!」
なにやらむせているのか、背中を丸めて咳き込むハインズがいた。
「どうした爺さん?
風邪でも引いたk」
「馬鹿者!
お前らのせいで死ぬかと思ったわ!
…っくしょーい!」
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「…ふぅ。」
「大丈夫か?」
「全く誰のせいだと思っとるんじゃ…」
「だからさっき悪いって謝ったじゃないか。」
数分してハインズは無事に山場(?)を超えたらしく、落ち着いたようだ。
シュウとのやりとりはそれこそ祖父と孫のようだったが、急に真面目な声になった。
「さて、そのレベルで来たということはいよいよ三次転職のようじゃな。
早いものじゃ…
昔はあんなに…」
…真面目な雰囲気は一瞬にして消え去ったようです。
エリニアの大賢者が今や反抗期の孫を見て昔は良かったと懐かしむご老人のよう。
「いや昔話はいいよ爺さん」
「なんじゃと!
年寄りの話はちゃんとじゃな…」
「わ、分かったからさぁ、とりあえず何すればいいの?」
孫娘…ではなくリュカに話をそらされるが、こほん、と咳払いをして今度こそ真面目に本題を話しだした。
「お前達にまずやってもらうのが一つ目の試練…“力の試練”じゃ。」
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カニングシティー、とあるバーの地下。
表向きはいたって普通のバーだが、地下に降りるとそこはカニングのまとめ役…ダークロードのいる盗賊のアジトだ。
そこについ先ほど、1人の少女が凄まじい勢いで駆け込んできた。
「…いきなりどうしたんだ?炬燵。」
ダークロードが少々心配そうに話しかけるが、相当急いで来たのか声をかけられた少女…炬燵は床に寝転がってぜーはーと息を荒くしていた。
「…いろいろと…あってな…はーっ、疲れた…」
「いろいろって…答えになってないぞ…」
と、炬燵の返事にダークロードが呆れていると、盗賊のアジトに繋がる梯子を半ば落ちるように駆け降りてくる音が響き、その直後に1人の少年が転がり込んできた。
「何だ今日はやけに客が多いな…」
再度ダークロードが呆れつつ話しかけたのはハイルだ。
「ちょいとまぁ…用があってな…」
ハイルもだいぶ急いで走ってきたようで、炬燵と同じように息を切らせて床に転がっている。
「お、ハイルか…
俺の方が…先に来たから…俺の勝ちだな…!」
そう炬燵が勝ち誇ったように隣で寝転がるハイルに話しかけている。
「てかお前あれは…明らかにフライングだろ…」
「行動力があると言ってくれ…」
「全くお前達は…
さて、そのレベルで来たということは三次転職だな?」
そうダークロードが床の二人に問い掛けるが、返ってきたのは
「「ちょっとタンマで…」」
という疲れ切った声だった。
(こいつらこんなんでちゃんと転職できるのか…?)
そんな二人を見てダークロードもつい胸中で心配してしまうのだった。