第二部:地底の隠れ里
□いざ、三次転職!
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「お、なんだここ?」
リュカやシュウが通ったものと同じように碧のクリスタルが生えた洞窟…。
ルーパン沼にある次元の扉を越えてきた炬燵もまた、ここに来ていた。
案の定ハイルの姿は見当たらない。
「あれ?ハイルの奴何で来てねぇんだ?」
そう言って炬燵が周りを見渡すと、
『あー、やっぱりこうなったか。』
と足元からハイルの声が聞こえてくる。
「うぉ、お前どこに隠れてやがる!」
『隠れてんじゃねぇよ。多分足元に転がってるはずだが…』
その言葉に従い、炬燵が足元を見ると、何やら手のひらサイズの黒い機械が転がっている。
どうやら通信機のようで、ハイルの声はそこから聞こえている。
「通信機…?
何だってこんなもん…」
『師匠が試練と言うくらいだ、会場には1人で入ることになるだろうと思ってな。
適当に持ってんのを放り込んでみたんだ。』
「全く、準備の良い奴だなー…
じゃあお前も変な洞窟みたいなところに来てんのか?」
『あぁ。
大方この奥で力の試練でもやるんだろうな。』
「よし。そんならのんびりしてらんねぇな。」
そう言うと炬燵はいったん通信機の電源を切り、奥に向かって進んで行った。
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相手側から通信機の電源が切られた音を聞いたハイルは炬燵の持つ通信機と全く同じものをポケットに放り込み、奥に進んでいく。
奥には妙に開けた空間があり、そこに入った瞬間にピリピリとした緊張感を感じた。
「ここが力の試練会場かな…」
そう呟いたとき、ポケットからノイズ混じりの炬燵の声が聞こえてきた。
『おい、今何か変に開けたところにいるんだが…
そこの中央に誰かいないか?』
そう言われ、ハイルは下にある空間の中央を覗くが、何か生物がいる気配が全くと言っていいほどしない。
「こっちにはいないぞ?
どんな奴がいるんだ?」
『えーっと…格好からして俺らと同じ盗賊だな。』
「誰かと勝負しろってことか…」
と言いながら、ハイルも自分の対戦相手を探す為に下へ降りる。
『奴の装備は金のハイドフードに上下闇スタド…あ、小手装備だから投げだな。
んー…どっかで見たことあるんだけどー…』
再度炬燵からの情報を受けたハイルの脳裏にとある人物が浮かび上がる。
「それって…
師匠じゃないのか…?」
『……』
「炬燵?」
『いつも天井にぶら下がってるから分からなかった…
そういや師匠の分身と戦うんだったな…』
そう言った炬燵の声はどこか落ち込んだ雰囲気があったものの、すぐにいつも通りの明るさを取り戻す。
『まぁ誰であろうとさっさと倒して戻ればいいんだよな!』
「そんなに簡単に倒せる相手じゃないと思うぞー?
でもまぁさっさと終わらせて…」
そう言ったハイルの背後に突然強大な力を持つ何かが現れる。
それをハイルは気配で察したものの、振り向く間もなく どんっ、と背中に衝撃を感じ、それと共に目の前が真っ暗になった──。
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『でもまぁさっさと終わらせて…
ぐあっ…!』
通信機を通して話している途中、急に短い悲鳴と共に岩壁が削れるような音が響き、一切の音がしなくなった。
「ハイル!?」
突然のことに慌てるがこの空間ではどうしようもない。
とりあえず自分がやるべきことをやるのが先だと言い聞かせ、炬燵は師匠、ダークロードの分身に斬りかかっていった。