第二部:地底の隠れ里
□いざ、三次転職!
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「師匠ー戻りましたー」
誰もいないバーの地下でハイルが言うと、天井からダークロードが顔を出した。
「お疲れ様。どうだった?力の試練は」
「自分が仕掛けといてその台詞は無いっすよ」
そう言いながらもハイルは黒い護符を渡す。
「確かに受け取ったぞ。
ではこれを三次転職官に渡すといい。
力の試練を終えたことを示す“強靭のネックレス”だ。」
その言葉と共に差し出されたのは赤い十字の飾りが付いたネックレス。
「ありがとうございます」
「ああ、ちなみに炬燵ならもう行ってしまったぞ?」
「 え 」
その一言を聞いたハイルは即座にエリニアへの帰還書を広げ、その場から消え去った。
──エリニアステーション──
「シュウお疲れー」
「うぃー。
死ぬかと思ったぜ…」
と、そこには既にリュカが飛行船の横にある積み荷に腰掛けてのんびりしている。
シュウはちょうど今来たようで、息が上がっている。
「あれ?ハイルと炬燵は?」
「ハイルはまだ見てないなぁ〜。
炬燵は…」
リュカが答えている途中にばたばたと足音が響き、音のした方を見ると駅の入り口にハイルの姿があった。
それを見つけたシュウが手を振ると、ハイルは2人に気付いて駆け寄ってきた。
「おぉ!来たな!」
「何だお前らもう来てたのか。
…ん、炬燵がいないな。」
「そっちの師匠は何か言ってなかったのか?」
「いや…俺より先に行ったって言うから慌てて走ってきたんだが…」
『オルビス行き飛行船の出航準備が完了致しました。
ご利用の方は…』
「話してる場合じゃないや!乗るよ!」
「ちょ、待てったら!」
突然のアナウンスに慌ててリュカはシュウとハイルを引きずって飛行船に乗り込んだ。
「ふう、間に合ってよかった〜」
とりあえず船室に入って一息つくリュカ。
ただハイルは少し不満そうである。
「ふう、じゃねえよ…
どうすんだ?炬燵置いてきちまったじゃねえか」
「俺が何だって?」
「……え」
声のした方…3人しかいないはずの船室の端っこには積み荷に座ってくつろいでいる炬燵がいた。
ちなみにチキンの骨と思われるものをくわえている。
リュカがそれに驚く様子はなく、のんきに炬燵と話している。
「ありゃ、チキン全部食べちゃったの?」
「いやまだ半分は残ってるぞ」
「4人分の半分って…
もう2人分食べちゃったんだ」
「だってそいつら来るの遅いんだもん」
そう言いながらもまだもぐもぐと口を動かしている炬燵からリュカが袋を奪い取る。
「…いまいち状況がよく分からないんだけど」
と、リュカが奪い取った袋の中のチキンを食べながらシュウが聞く。
「うんとね、実はあたしが来たときには炬燵もういたんだよね。」
「そういうこった。
つーことで競争は俺らの勝ちな!」
と炬燵は嬉しそうに親指を立てる。
「いきなりそっちかよ!
いやでもハイルが最後だったから俺らの勝ちだ!」
対するシュウも負けじと言い返す。
2人の様子が言い合いから殴り合いになりそうだったためリュカが仲裁に入る。
「まぁまぁ。
ここは1つビリのハイルが皆に何か奢るってことでどう?」
「「いいなそれ!」」
「おい!俺の意見は聞かないのか!」
リュカの提案に炬燵とシュウは大賛成のようだが当のハイルは完全に放置されている。
「俺たこ焼き食いたいな〜」
「エルナスって饅頭が美味しいんだよ〜!」
「おお、じゃあ饅頭食おうぜ!」
「俺の話を聞けぇっ!!」
騒がしい船室をよそに飛行船は静かにオルビスへと向かっていた。
──エルナス奥地──
三次転職官の館から1人外に出たリュウは森を抜け、人里離れた小さな集落の入り口に来ていた。
「ここに来るのも5年振り、か…」
そう呟くと集落の奥に入ることなく、脇道に入っていった。