第二部:地底の隠れ里

□惨劇の起きた刻
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壁を通り抜けた先はいたって普通の民家だった。

雪国らしく大きな暖炉はあるが調度品は少なく、質素な暮らしぶりが伺える。

そして家の中には先ほどの銀髪の女性と、茶色い髪をした5、6歳の男の子に銀色の髪をした2、3歳の女の子がいる。

だがリュカの視界が捕えたものは別のものだった。

「これって……」

「あぁもう勝手に行くんじゃねぇ!」

家の玄関辺りからハイルの怒鳴り声が聞こえるものの、リュカはそれが聞こえていないかのようにあるものを見つめていた。

「ん?どうしたんだ?」

そう炬燵が聞くと、

「これって…まさか…」

リュカが信じられない、と言うかのように見つめていたあるものを指差す。

それは綺麗な風景画付きのカレンダーだ。

最初は不思議に思っていた3人も、リュカの指差した場所を見た途端に絶句する。


…その紙に書かれた数字は、現在地が元いた場所の14年前であることを示していた。


「14年前のって…ま、まさかな…」

「ここは過去だっていうのか…?
でも何で俺らが…?」

炬燵とシュウが揃って唸っていると、ハイルが突然何か閃いたような表情に変わった。

「もしかしたら…」

「ん?」

「もしかしたら、“時空の扉”が開いたのかもしれない。
“時空の扉”は時間すらも超えて移動出来るから…」

「でもそれこそどうやって?
“扉”はダークにしか開けないんじゃ…」

今の状況について異世界に行ったリュカとハイルで討論が始まったものの、炬燵とシュウは話に入れずぼんやりしていた。

「“時空の扉”ってなんだ?」

「俺に聞くなよ。
あいつらがどっか行ってたときに見たやつとかじゃないのか?」

「あー、訳分からねぇ」

2人がこうしてぼやく間にも討論は続いているわけで。

「要するに“扉”を開くには“闇の力”が必要なんだろ?」

「って言ったってあたし達はその“力”を持ってないじゃん!」

「…まぁそうなんだけ…
…そうか、あのペンダントだ!」

悩みながらも再度何か閃いた表情をしたハイルは、夜中に見た煌めくペンダントのことを話した。

「そっか…ダークのペンダントには“闇の力”が込められているから…。
それで開いたのかな」

と簡単に結論を出すと、全く現状の分かっていない炬燵とシュウに掻い摘んで説明した。

「ここが14年前のエルナス、ねぇ…」

「じゃあさっきのちびっこは白髪の兄ちゃん、ってことか?」

「…そうなるだろうな」

疑問もとりあえず解決したことにして家の中を見回す一行。

「って言うか…。
俺達があれだけ騒いでたのに何も反応しないんだな」

シュウがそう言って家の主である女性とその子供達を見る。

彼女らは楽しそうに話をしているものの、一行に気付いている様子はない。

「多分それが“過去は変えられない”ってことなんじゃないかな。
本来未来にいるはずの人間が干渉したら、少なからず過去が変わっちゃうから…」

とリュカが異世界で出会った少年の言葉をを思い出しながら言った。
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