第二部:地底の隠れ里
□再会
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一旦兄に引っ付いているミュウを引き剥がし(それでもまだくっついているのだが)、落ち着いたところでリュウが不思議そうな顔をした。
「お前…なんでまたこんなところに?
まさか、あの時…死んでなかったのか?」
あの時とは勿論、14年前にリュウの一家を“切り裂きジャック”が襲った時で、ミュウもそれを思い出したのか少し眉を潜める。
「んー、残念ながらあの時生き残ったのはお兄ちゃんだけだね。
でもなんかあたし未練があるみたいでさ、上に行けなかったみたい。
気付いたら幽霊になってて暫くその辺ふらふらしてたんだけど…。
エルナスの地に縛られて雪山の亡霊になっちゃったんだ」
「お前、未練なんかあったのか…。
あの時確かまだ3つじゃなかったか?」
呆れたような兄の言葉に妹はぷう、と頬を膨らませた。
「それでも未練はありますー。
確かにあたし単純だったけどね〜」
後ろで「単純って…炬燵みたいだな」と言ったシュウが炬燵に殴られそうになっている中、
「あれー?
でも明らかにミュウちゃん3歳じゃないよね?」
そうリュカが聞くのも当然だろう。
ミュウの背格好は16、7歳くらいで、少女ならともかく決して幼女には見えない。
「あー、それはねー…いろいろややこしいんだけどー。
本来雪山の亡霊も含めて、幽霊ってこの世の時間の流れから外されるから、何時になっても死んだときの姿でいられるんだって。
ただ…あたしの場合は未練が強すぎて時間の流れに取り残されたんだってさ」
「本当にややこしいな…。
ってか死んでんのに生きてる人間に触れたりするもんなのか?」
そう言ったハイルの視線の先には未だにリュウの服の裾をしっかりと掴んでいるミュウの姿。
「あ、それも未練のせいらしいよ〜。」
当の本人はまるで他人事のように笑っていて、それを見た兄は盛大な溜息をつく。
「物理法則を軽く吹っ飛ばしてるじゃねぇか……。
つーかお前よくそんなこと知ってるな」
「えっとね、サンタみたいな白髭付けた魔法使いのお爺ちゃんが教えてくれたの!」
「その白髭の魔法使いって…。
まさかアルケスタの爺さんじゃないだろうな?」
「そう、それそれ!
幽霊になっちゃった直後とか、結構お世話になったな〜」
と、普通の人が聞いたら耳を疑う様なことを笑顔で語るミュウにリュカがうーん、と首を捻りながら聞く。
「えーっと、アルケスタさんて…誰?」
「元錬金術師で魔法使いのお爺ちゃん。
噂だと不老不死らしいよ?」
「不老不死ったってそれを得た時にはもう爺さんだったみたいだから微妙なところだがな」
昔を思い出したのか、リュウは複雑な表情をして呟く。
「あ、そうだ。お爺ちゃんの話で思い出したんだけどさ。
お兄ちゃんがいなくなってから…お爺ちゃん大分心配してたよ?」
「んー…俺も小さい頃にはあの爺さんには世話になったからな…。
…仕方ない、その内会いに行かなきゃならんな。
本当はお前らをここに連れてきたらすぐにでもシュルフに戻る予定だったんだが…。
今となっちゃ無理な話か」
と、今すぐにでも行きそうな雰囲気のリュウをリュカが咎める。
「その内って…あの傷じゃ暫くは動けないでしょ?
いくらヒール掛けても1ヶ月近くは無理だと思うんだけど」
「大丈夫、お兄ちゃんならあたしが見張ってるし!」
「見張ってるってお前…」
偉そうな妹に対して不満げなリュウが更に言葉を続けようとした時だった。
館の入り口が静かに開いたのは。