第三部:縞瑪瑙と錬金術師
□若き研究者
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極寒の地、エルナスにて三次転職を終え、スリーピーウッドでナインハートから任務を受けた一行…リュカ、ハイル、テトリス、スアの4人は錬金術師の街、マガティアに来ていた。
「えーっと、誰を訪ねればいいんだっけ?」
街に入って早々にリュカがハイルに聞く。
「目撃者はノクシーって言う女の人だな。
多分研究者だと思うから…研究所にでも行ってみるか?」
「マガティアの研究所は確か…街の一番端にあったはずです。
ただ…マガティアでは2つの勢力に別れて対立しているようなので研究所も2つ、あるいはそれ以上あるでしょうね」
スアの説明を聞いて悩む一行だったが、テトリスの「まぁ片っ端から当たっていけばいいんじゃないかな?」という意見に賛成してとにかく進むことにしたのだった。
そうして一行は大きな研究所に辿り着いた。
中に入ってみると、大きな水色のクリスタルが目に付くが、エントランスに人はいないようなので近くにあった階段を降りていく。
地下に降りると、所々に似たような扉の付いた長い廊下が続いていた。
あまりに長い廊下に一行が驚いていると、扉の1つが開いて中から悲鳴と共に大量の本と女性が飛び出してきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌ててリュカが駆け寄って散らばった本を集めていると、扉の奥から「おい大丈夫か!」と青年の声がした。
声に続いて出て来たのは茶色いキャップを被った青髪の青年。
「ノイ、大丈夫か?」
「あたしは大丈夫よ。
…あ、ごめんね、驚かせちゃって。あとありがと」
青年にノイと呼ばれた、長いオレンジ色の髪をポニーテールにした女は一行を見てにこっ、と笑った。
「手伝って貰っちゃって悪かったな。
俺はジェミニスト協会所属の錬金術師、ウィルだ。よろしくな」
青髪の青年がそう言うと、ノイはにやりと笑って付け足す。
「あ、こいつ皆にはうぃーって愛称で呼ばれてるからそっちで呼んであげてね!」
「おい、爽やかにほらを吹くな!」
「あ、ごめん間違えた。
ウィルの方が愛称で本名はウィリアムズ3世って言うんだよ!」
「無駄にリアルな嘘を吐くな!
誰かが信じたらどうする!?
てかその名前何処の王子様だよ!」
そんな調子で騒ぐノイとウィル(またの名をうぃー、もしくはウィリアムズ3世。面倒なので総称してウィル)を見て、一行は
(こんなのが錬金術師でマガティアは大丈夫なのか…?)
と思わずにはいられなかった。
暫くすると一通り騒ぎ終わったのか、ノイが再び一行を見てにっこりと笑う。
「そう言えばあたしはまだ名乗ってなかったわね。
あたしはノクシー。ノクシー・オンガードよ。
ウィルと同じくジェミニスト協会所属の錬金術師で、皆にはノイって呼ばれてるの。よろしくね」
「…ノイさんって、まさか…“闇夜”を目撃してます?」
スアがはっとした様に聞くと、ノイは目を丸くしている。
「あれ?もしかして貴方達…」
「おいら達はギルド「twilight」から来たんだ」
テトリスの言葉に頷くと、ノイは一行を見渡し、リュカの顔を見て暫く動きを止める。
「…?
な、なんか顔に付いてます?」
「あ、ごめんごめん。そういうんじゃなくて、こんな年の子でもギルドに入っていろいろやってるんだなーと思ってさ。
あとあたしに敬語はいらないわよ。堅苦しいの嫌いだし」
「じゃあ、本題に入らせてもらうが…。
あんたが見たのは深緑のローブを着た紅い髪の少年で間違いないか?」
そんなハイルの問に、ノイははっきりと、
「えぇ。間違いないわ」
と答えた。